[不動産(売買以外)]
建物の増改築(リフォーム)と贈与について
- 投稿:2020年05月21日
- 更新:2024年06月12日

親が高齢になって同居することになったけど、親所有の建物に一緒に住むと手狭になるので子がお金をだして増改築することがあります。
こういった良くあるケースで思わぬ税金がかかってしまうことがあるので注意して下さい。
※このコラムは動画でも解説しています。
贈与税が大変なことに
親名義の建物に子がお金を出して増改築した場合、増改築部分に関しては子が所有権を持つわけではありません。
民法に次のような条文があります。
民法第242条
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。
つまり、不動産(建物)の所有者(親)は、その不動産に従として付合した物(増改築部分)の所有権を取得するということになるのです。
そうすると、親は増改築部分に係った改装費分をまるまる得したことになりますよね。
この改装費用分が子から親への贈与になるのです。
例えば、時価1000万円の建物に1000万円の増改築工事を行った場合、子から親へ1000万円の贈与があったことになります。
贈与税の税率は半端じゃないので、税金だけでとんでも無い事になります。
<参考> 贈与税の税率表
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税が掛からないようにするためには
贈与税が掛からないようにするためには、子は親から建物について増改築工事で出した金銭相当の持分を譲り受けることになります。
子が出したお金によって親名義の建物の価値が上昇したのですから、親に対して子が出した金銭相当の所有権を寄越せという権利が発生します。これを子から親に対する償金請求権といいます。
親から子への所有権の一部移転
子が償金請求権を使って、親から建物の所有権の一部を取得すれば、親は贈与されたことにはなりません。
子の償金請求権という権利に対して、親は建物の所有権の一部を渡すことになるので、親から子へ建物という物で債務を弁済したことになります。これを代物弁済といいます。
登記手続きとしては親から子への所有権一部移転、登記原因は代物弁済ということになります。
親名義の建物(1000万円)に子が増改築工事(工事代金1000万円)をした場合、子は親に対して1000万円の償金請求権を持つわけです。
建物の価値は2000万円になるわけなので、1000万円/2000万円、つまり建物の1/2を代物弁済としてもらえることになります。
実際、この登記手続きを行う場合は、まずは建物の増改築による表題部の変更登記を土地建物屋調査士に依頼します。
表題変更登記が終わった後に、代物弁済を原因とした親から子への所有権一部移転登記を行います。
住宅ローン控除について
子がリフォーム代金を金融機関から融資を受けて行った場合に、住宅ローン控除が使えるかが問題になります。
結論として、建物の名義が親なので住宅ローン控除は使えないことになります。
もし、このようなケースで住宅ローン控除の適用を受けるのであれば、リフォーム前にあらかじめ親から子へ建物の名義を変更しておく必要があります。
そうすれば子の名義の建物を子が融資を受けてリフォームすることになるので、住宅ローン控除のその他の要件を満たしていれば適用されることになります。
ただし、事前に親から子へ名義変更する場合に、無償で親の名義を子に渡すのであればこちらも贈与税の問題が生じますので、注意が必要となります。
その他の注意点
今回のようなケースでは、税金に関する注意点が多く、この業務にあたる場合は税理士の関与が必須になります。
まず建物の時価を出さなけばなりません。そうしないと親から子への所有権一部移転の持分を出したりする計算ができません。
また、親に譲渡益がある場合には譲渡所得税の課税が発生します。
建物の一部を子に譲渡したことになるので、課税の問題が生じるのです。
このあたりの計算も子にどれだけ持分を移転するかによって変わるので注意しなければなりません。
税金に関して具体的な計算をして、贈与税は譲渡所得税に関するアドバイスを行うことは税理士法に違反してしまうので司法書士では対応できないことになります。
税理士も登記手続きを行うことはできませんので、実際このケースに対応する場合は、表題部変更登記に土地建物屋調査士、所有権移転登記に司法書士、各種税金の計算に税理士が関与することになります。
当事務所では、信頼できる土地建物屋調査士、税理士と共同でこれらの業務にあたることができますので、増改築した後の贈与税について税務署から指摘があった時など、一度ご相談いただければと思います。