[会社・法人]
完全解説!!会社設立の登記事項の決め方
- 投稿:2018年04月03日
- 更新:2024年06月12日
株式会社や合同会社などの会社を設立するときに、会社の名前(商号)や本店所在地、事業目的など色々と決めなければなりません。
我々司法書士も会社の名前どうしますか?とか、本店の場所どこですか?とか色々とお客様にお尋ねします。
ご依頼いただいた方には、登記事項(登記簿に記載される各項目)の決めた方をご説明して一緒に内容を決めていきます。
今回は、当事務所がどういう基準や考え方で会社設立の必要な項目を決めているのかを解説します。
内容は株式会社のものですが、合同会社も重複する部分がほとんどですので、考え方はそのまま当てはまります。
ほとんどの会社が譲渡制限会社(非上場会社)ですので、こちらに絞っての解説となります。
また、会社設立を具体的考えて、それなりに調べたり少し前提知識がある方向けの記事になります。
※このコラムは動画でも解説しています。
会社の名前(商号)
会社の看板ともいうべき商号ですが、まず登記法上の一定のルールがあります。
まず、株式会社という文字をどこかに入れなければなりません。
前㈱でも後㈱でも「中㈱」でもOKです。
「株式会社さえき」、「さえき株式会社」、「さ株式会社えき」(笑)のいずれでもいいのです。
あとは使える文字と使えない文字がありますが、基本的にはひらがな、カタカナ、漢字、ローマ字のいずれも大丈夫です。「♪」「$」など記号文字で一部使えないものがあったり、スペースが入る入らないなどに気をつければならなかったりする場合もありますが細かいルールですし書くとここだけで長くなるので、私が面倒くさいので、法務省のリンクを貼っておきます。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji44.html
以上は法律できっちり決まっている部分ですので、あまり心配する部分ではありません。
実際は、商号を決める時には類似商号にも注意点しなければなりません。
現在は昔ほどうるさくないので、同一住所に同一商号でなければ「登記はできます」。
でも、登記が出来ればOKというわけではありません。
商標登録されている名称や大企業で一般的に周知されている名称、その他にも悪意で同一の名称で近隣で商売をする場合では、場合によっては登記した商号を変更しなければならないこともあります。
ですので、まず同一の住所に自分がつけようとしている商号の法人が無いかを調べます。
調査に使用できる法務省のリンクを貼っておきます。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00076.html
更に念の為インターネットなどで検索もしてみましょう。
近隣で同じ事業内容で同一の商号や極めて類似の商号が無いかを調べておきます。
このあたりまでやればまず問題ないでしょう。
会社の住所(本店所在地)
本店所在地は、代表の自宅でも大丈夫です。
本店所在地によって登記の管轄が決まります。
ただし、いわゆる「バーチャルオフィス」は避けましょう。
登記自体はできるのですが、実態が伴っていないので法的にまずいという点と金融機関によってはバーチャルオフィスの住所等を把握していて口座開設を認めてくれないこともあるようです。
そうなった場合に、設立してすぐに本店の変更をしなければならなくなって、無駄な出費が発生します。
公告の方法
株式会社の場合、決算の公告をする義務があります。その他にも、減資や会社を解散する時、合併や会社分割をする時などにその旨を公告することが求められます。
公告の方法は、「官報」「新聞(日刊新聞)」「電子公告」の方法を選択できます。
官報や新聞では、文字数によって公告料金が変わります。
一般的には官報に公告する方法を選択している会社が多いです。
新聞ではかなり高額になってしまうこともあります。
ですので、ホームページを持っていて、決算公告専用のページを開設できるのであれば電子公告を選択すればコスト的には一番抑えることができます。
事業目的
会社の事業目的ですが、これは会社がこれから実際に行うべき事業を中心に記載します。
会社は事業目的の範囲でのみ法人格を有するとされています。
つまり、事業目的に書いていないことについては法人として契約などはすることができないということになります。
ですので、会社が実際行う事業以外にも、もし、今後やるような予定のある事業があればそういったものも記載するようにすればいいでしょう。
ただし、あまり何でもかんでも入れすぎると、実際何をやっている会社か分からなくなります。
それに、事業目的の最後に「上記に附帯関連する一切の事業」という項目を入れるのが定型ですので、この文言を入れておけば各事業目的にある程度「ふくらみ」を持たせることができます。
他に注意点として、事業目的に入れる単語ですが、「現代用語の基礎知識」に記載されている程度のものであれば大丈夫ですが、あまりにも新語で一般的に意味が伝わらないような単語は使用できません。マジ卍です。
発行可能株式総数
一番何のこっちゃ分からない項目だと思います。
株式会社はその名のとおり株式を発行する会社ですが、無尽蔵に発行できるわけではなく、あらかじめ上限を決めなければならないルールになっています(理由は割愛)。
ですので、あらかじめ決めます。
少なくとも最初に発行する株式数よりは多くしなければなりませんが、上限はいくらでもOKです。
それこそ1億株まで発行できるとしてもいいです。
ただ、あまり多くしすぎてもしょうがないですし、特に決めかねるのであれば発行する株式数の10倍程度にしておけばいいと思います。
もちろん後で変更することも可能ですのであまり深く考えなくてもいい部分にはなります。
会社の機関設計
機関設計とは、役員の構成のことです。
現在の会社は取締役1名から設立することができます。
監査役も必須ではありません。
新設の比較的小さい会社では、最近は監査役を設置することもほとんどありません。
役員の任期
役員の任期は、取締役2年、監査役4年が原則ですが、それぞれ最大10年まで任期を延ばすことができます(取締役では1年などに短くすることもできます)。
任期が長いことのメリットは、役員の更新手続きを10年毎にすればいいので、手間とコストが掛かりません。
ただ、忘れてしまうというデメリットもあります。
任期が短いことのメリットは、例えば友人を役員に迎え入れた場合に途中で仲違いをして役員を辞めてほしいと考えたとします。
任期が短ければ、任期満了で自動で退任してもらえますが、任期が長ければ任期満了で自動で退任してもらうことはできなくなります。
ですので、あなたがオーナー(株主)の権限で解任(クビ)にすることはできるのですが、登記簿上にも「解任」という文字が出てきますし、クビにされた人が不当だといって任期満了までの役員報酬を請求するように争いが生じることも考えられます。
ですので、一人代表や親族を役員にするようなケースでは長めの任期で設定し、友人など他人が役員として入る場合は短めの任期にするように私は勧めています。
資本金の額
現在は1円からでも設立できます。
ですが、あまり小さい金額だと「会社の信用力」という面では劣ることになります。
ある程度、最低でも100万円くらいの資本金にすれば格好は付くかなと思います。
また、許認可等がからむ場合に一定以上の資本金が必要な場合もあります。
資本金が1000万円以上の会社を設立する場合は、消費税を初年度から納税義務が発生するので注意が必要です。
※1000万円未満なら設立~2期目終了までは消費税を払わなくていい場合がある
決算期
決算期は会社の登記事項ではありませんが、いつを期末にするかは結構重要な部分ですので併せて解説します。
まず先ほどの消費税の免税期間とも連動します。
資本金が1000万円未満であれば設立から2期目までは消費税を払わなくていいのです(一定の基準を満たすと払わなければならない場合もありますが今回は割愛します)。
ですので、なるべく長く1期を取ったほうが有利ということになります。
例えば、平成30年4月2日設立で期末を4月末日に設定すると、1期目が1カ月弱で終了してしまうことになります。
逆に期末は3月末日とすれば、1期目はほぼ丸1年取ることができます。
後者の方が消費税を支払わなくていい期間が長くなるので節税対策になるのです。
あと、消費税以外の観点も重要です。
上記の例で1期目を長く取れるからという理由で決算を3月末にしたとします。
ですが、この会社の一番売り上げのある月が3月だとすると、思い切り売り上げがあって黒字の時に決算を向かえてしまうことになります。
本当であれば設備投資などをして節税対策できればしたいところです。
そこで、1期が1カ月短くなってしまいますが2月末決算にします。
そうすれば、3月で入った売り上げをその後、たっぷり1年かけて設備投資など必要なものにお金をかけて節税対策をすることができます。
最後に
以上、ざっとメインになる登記事項について解説しました。
ある程度の決め方や考え方は上記のとおりです。
会社設立は自分ですることもできますので参考になさって下さい。
ネットで各書類の雛形がありますのでそれらを使えば会社設立登記をすることは可能だと思います。
ただ、他にも気にする点はいくつもあります。
専門家のサポートで安心や確実性を買いたい場合は是非ご相談下さい。