司法書士法人さえき事務所の代表司法書士。
相続関係の手続きを中心に、生前対策(遺言・家族信託など)、不動産や会社法人登記の業務を行っています。情報や知識を知らないがゆえに損をすることの無いように、情報発信を通じて、司法書士という存在が皆様のお役に立てることを世間に広め、不幸になる人を一人でも減らしたいと願っています。
[不動産(売買以外)]
民事執行法第82条第2項の手続について
- 投稿:2013年08月23日
- 更新:2024年06月12日
町田の相続,遺言,成年後見,会社設立の専門家,司法書士の佐伯知哉です。
今回は、民事執行法第82条第2項の手続についてです。
※このコラムは動画でも解説しています。
民事執行法第82条第2項を利用する時とは
この手続は競売によって不動産を取得する時に用います。
競売では、要するに一番高い金額を入札した人が、その代金を支払うことによって不動産を取得できます。
手持ちの資金で代金を支払うことが出来れば、何の問題もないのですが、金融機関から融資を受けて、競売物件を落札したい時があります。
そのような時にこの法82条2項の出番です。
本来であれば、競売による所有権の移転は、裁判所が法務局に嘱託する、嘱託登記によってなされます。
そうすると、融資をしている金融機関は当然対象物件に担保をつけたいのですが、嘱託登記による所有権移転と、金融機関による担保登記との間にタイムラグが生じます。
なぜなら、所有権移転に関しては、裁判所→法務局となり、担保設定に関しては司法書士→法務局となるからです。同時に申請していません。
法82条2項は、このタイムラグを無くすために作られた制度です。
法82条2項の申出を裁判所にしていると、裁判所から直接送付されていた所有権移転登記の嘱託書を、予め指定されていた司法書士(又は弁護士)が受け取ることができます。
これによって、所有権移転登記と担保設定登記(抵当権設定や根抵当権設定)を同時に連件で申請することができるので、所有権の移転と担保設定にタイムラグが生じないため、金融機関も安心して融資を実行できるのです。
具体的な手続
簡略化した流れですが、まず、管轄の裁判所に、嘱託書を交付する司法書士(又は弁護士)を指定した、申出書と指定書を提出します。
その後、競売代金を支払う代金納付の当日に、買受人は競売代金を支払い、上記で指定された司法書士が裁判所の書記官から所有権移転登記の嘱託書を受け取ります。
司法書士は所有権移転登記の嘱託書と金融機関の担保設定登記を管轄の法務局に連件で申請します。
後日、所有権移転登記の登記識別情報は、法務局→裁判所→買受人の流れで送付されます。
担保設定の登記識別情報は法務局→司法書士→金融機関の流れです。
所有権移転登記は司法書士が法務局に持ち込んではいますが、あくまで嘱託登記ですので、司法書士が代理人になっていません。
その為、登記識別情報は司法書士が受け取ることができませんので、上記のような流れになります。
担保設定に関しては通常の取引と同様です。
このように、競売物件を融資を受けて購入する場合に使用する手続です。
不動産業者など、転売目的で競売物件を落札する場合以外でも、個人でもこの手続は利用できます。
個人で利用しているケースはあまりありませんが、競売物件に興味のあるかたは利用するのも手ですね。