■クライアント属性
U様/神奈川県相模原市/50代/女性/相続登記+遺言書作成
■ご相談の背景・経緯
U様は当初、ご自身の遺言書作成についてのご相談で来所されました。お話を進める中で、相続財産に含まれる不動産の調査を行ったところ、U様のお父様が数年前に亡くなられた際の相続登記がされていない物件が見つかりました。このままではU様の遺言書の内容にも影響が出るため、まずは過去の相続登記を済ませる必要がある状況となりました。
さらに複雑だったのは、相続人の中にU様の妹様が含まれていたことです。妹様とは長年音信不通の状態で、LINEもブロックされており、現時点では直接の連絡が取れないとのこと。U様は「もう関わりたくないということかもしれない」と不安そうでしたが、それでも相続手続きを進めなければ先に進めないという現実がありました。
ご自身の意思をきちんと形にするために、そして家族間の財産関係を整理しておくために、U様は当事務所に、相続登記と遺言書作成の両方を正式にご依頼されました。
■専門家のポイント解説
今回のケースでは、当初のご相談は「遺言書の作成」でしたが、調査の段階で「相続登記未了」という法的リスクが顕在化し、そこから対応の優先順位を見直す必要がありました。このように、相続関連の手続きでは、依頼者ご本人も気づいていない“過去の手続きの未了”が障害になることが少なくありません。
相続登記がなされていない状態は、不動産の名義が亡くなった方のままであるということです。この状態が長引くと、相続人が亡くなって代替わりすることで権利関係が複雑化し、登記のハードルが一気に上がってしまいます。今回は、幸いU様が早い段階で相談に来てくださったことで、大きなトラブルに発展する前に対応することができました。
また、相続人である妹様との関係が疎遠だったことも、手続き上の大きな障壁でした。司法書士は代理人として相手方との交渉や説得を行うことはできませんが、その代わりに「法的事実の伝達」や「中立的な情報提供」といった役割を果たすことが可能です。今回も、妹様に対して現状を整理した書面を丁寧に作成し、冷静に状況を説明するかたちでお送りしたところ、時間はかかりましたが、結果的に妹様からの反応を得ることができました。
そこからは、U様と妹様の間で協議を行っていただき、その内容をもとに当事務所で遺産分割協議書を作成。協議の過程では、双方にとって公平な形になるよう、権利関係や登記上の影響などを丁寧にご説明しました。相続登記に必要な戸籍収集や申請書類の作成もすべて当方で対応し、最終的には登記手続きが無事に完了しました。
この事例から言えるのは、「思い立ったときに専門家に相談することの大切さ」です。ご本人にとっては想定外の問題であっても、適切なサポートがあれば、冷静に着実に前に進めることができます。相続にまつわる問題は時間が経つほど複雑化します。少しでも不安がある方は、ぜひ早めのご相談をおすすめいたします。
■お客様の声
当初は自分の遺言書を作るためだけの相談のつもりでしたが、まさか父の相続登記が終わっていないとは思ってもおらず、正直、最初は戸惑いました。しかも、妹とは長い間連絡を取っておらず、LINEもブロックされていて、本当に進められるのか不安でいっぱいでした。
ですが、先生は状況を整理しながら、私の立場でできること・できないことをきちんと説明してくださり、手紙の文面も一緒に考えていただけたので、少しずつ気持ちも落ち着いてきました。妹から連絡が来たときには本当にホッとしました。
一時は「もう無理かもしれない」と思う場面もありましたが、無事に相続登記まで終わらせることができて本当に感謝しています。最初は遺言書だけのつもりが、こんなに学びのある手続きになるとは思っていませんでした。丁寧にサポートしていただき、ありがとうございました。