事例の背景
S様は東京都町田市にお住まいの70代の女性で、数か月前にご主人を亡くされました。生前、ご主人名義の自宅にお二人で暮らしており、葬儀や諸手続きを一通り終えた後、「名義変更も自分でできるところまでやってみよう」と考えたそうです。
法務局のホームページやインターネットを参考に、戸籍謄本や除籍謄本の収集を始めたS様。しかし、集めた書類を確認していく中で、相続人の一人である息子さんが現在海外に在住しており、日本に住所も印鑑証明書もないことに気づきました。さらに、通常の遺産分割協議書は、相続人全員が同じ書面に実印を押印し、印鑑証明書を添付する必要がありますが、海外在住の息子さんにはその対応が難しいことが分かりました。
「どうすればいいのか分からない」「このままでは登記ができないかもしれない」と不安を感じたS様。書類のやり取りを海外と日本で何度も行うのは現実的ではなく、郵送のリスクや時間のロスも心配でした。そこで、相続登記に詳しい専門家を探すことに。
知人の税理士に相談したところ、「海外の相続人が関係するケースに慣れている司法書士法人さえき事務所がいい」と紹介を受け、依頼を決められました。
当事務所からのご提案
S様からご相談を受けた際、まず確認したのは「誰が相続人となるのか」と「相続財産の内容」でした。ご主人の相続人はS様と、海外在住の息子様の2名。相続財産はご夫婦で暮らしていた自宅不動産が中心であり、S様がその不動産を相続する方針がすでに家族内で決まっていました。
しかし、問題はその手続きの方法です。通常の相続登記では、相続人全員が同じ「遺産分割協議書」に署名押印し、実印と印鑑証明書を用意する必要があります。けれども、息子様は海外在住で日本に住所がなく、印鑑証明書も取得できません。このままでは、一般的な形で遺産分割協議書を整えることができず、登記申請が進められない状況でした。
そこで当事務所では、相続登記の要件を満たしながらも現実的に対応できる方法として、「遺産分割証明書」を活用することを提案しました。これは、1通の協議書に全員の署名押印をもらう代わりに、相続人それぞれが別々に作成する書面で遺産分割の内容を明確にする方法です。これにより、海外との書類の持ち回りを避けつつ、法的にも有効な協議書類を整えることが可能になります。
息子様には、日本の実印・印鑑証明書の代わりとして、「署名証明書」を日本領事館で取得してもらうようご案内しました。署名証明書とは、領事館が「確かに本人がこの署名をした」と証明するもので、海外在住の方が日本国内の実印証明の代替として利用できるものです。当事務所が領事館での取得手順や必要書類を丁寧にご案内し、息子様も現地でスムーズに対応することができました。
一方で、日本国内にいるS様側では、戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書の取得などを当事務所が代行。全体の書類を整理し、登記申請に必要な書類が揃うよう進行を管理しました。書類の整合性や提出先の確認など、通常であれば時間がかかる部分をすべて事務所がサポートしたことで、S様が直接動く必要はほとんどありませんでした。
こうしたサポートにより、海外との書類のやり取りも最小限に抑え、最終的にはすべての書類が整ってから登記申請を行い、無事にS様単独の名義で相続登記が完了しました。
今回のケースは、海外在住の相続人が関係するため複雑に見えますが、適切な手順を踏めば、国内の相続登記と同じようにスムーズに完了できます。司法書士が間に入り、必要な書類の準備や領事館での対応を明確にすることで、無駄なやり取りやトラブルを防ぐことができます。当事務所では、このような「海外相続人が関わる相続登記」についても多数の実績があり、安心してお任せいただけます。
お客様の声
相続登記のことはまったく分からなかったのですが、「自分でできるところまではやってみよう」と思い、戸籍を集め始めました。ところが、息子が海外に住んでいるため、日本の印鑑証明書を用意できないことがわかり、どうにも手続きが進まなくなってしまいました。法務局にも問い合わせましたが、説明が難しく、結局どうしたらよいのか分からず途方に暮れていました。
そんなとき、知人の税理士さんから「相続に詳しい司法書士」としてさえき事務所さんを紹介してもらいました。相談の際には、海外在住の相続人が関わる場合の注意点や、領事館での手続きの流れなどを丁寧に説明してくださり、とても安心しました。手続きの途中でも進捗をこまめに連絡してもらえたので、不安を感じることなく進めることができました。
ただでさえ専門的な内容で、しかも通常の方法ではできないケースでしたが、さえき事務所さんにお願いしたおかげで、ほとんど自分で手間をかけることなくスムーズに相続登記が完了しました。本当に感謝しています。今後も何かあればぜひお願いしたいと思います。