■事例の背景
E様のご主人が亡くなられたのは、今から20年以上も前のことでした。ご主人名義の自宅には、E様がそのまま住み続けており、娘さんたちもそれぞれ独立して家庭を持っていたため、特に不都合を感じることはなかったそうです。
しかし、近年「相続登記の義務化」というニュースを耳にし、手続きをしていなかったことを思い出されたとのことでした。義務化に伴う罰則の話や、今後の売却・相続のことを考えると、きちんと整理しておいた方が良いと感じられたそうです。
当初は「古い話なので、書類が残っていないかもしれない」「自分が高齢だから、手続きが大変なのでは」と不安を抱いておられました。そんな中、過去に当事務所で相続登記を依頼されたご友人から「高齢の方にも丁寧に対応してくれる事務所」と紹介を受け、さえき事務所へご相談いただくことになりました。
E様にとっては、「放置していたことへの不安」と「どこから手をつけていいのかわからない」という2つの悩みを抱えた状態でのご相談でした。
■当事務所からのご提案
E様のケースでは、ご主人のご逝去から20年以上が経過していたため、まずは戸籍や住民票などの保存状況を確認するところから始めました。調査の結果、ご主人の古い住所証明資料がすでに役所で廃棄されており、登記簿上の住所と死亡時の住所との連続性を通常の方法では証明できないことがわかりました。
このままでは、法務局で相続登記の申請を受け付けてもらえないおそれがありました。そこで当事務所では、過去の住民票除票や固定資産税の課税台帳、登記簿の過去記録などを組み合わせて代替的に住所の連続性を証明できる資料を整え、法務局で受理される形へと調整しました。
相続人はE様と娘さん3名の合計4名でしたが、それぞれが別々の地域にお住まいであり、E様ご本人も高齢のため書類のやり取りが大きな負担になることが想定されました。そこで、当事務所が全員分の署名・押印書類の取り付けを代行し、郵送や本人確認をすべて当方で管理しました。E様はご自宅にいながらスムーズに手続きを完了でき、娘さんたちも「母の負担が少なくて助かった」とおっしゃっていました。
さらに、登記簿の調査の過程で、自宅を建て替えた際に古い建物の滅失登記が未処理のまま残っていることが判明しました。これは、登記簿上に「実際には存在しない建物」が残っている状態であり、将来的な売却や担保設定の際に支障となる可能性がありました。そこで、提携の土地家屋調査士と連携し、現況に合わせて建物の滅失登記を同時に実施することをご提案しました。
このように、単に「相続登記をする」というだけでなく、登記簿全体を見渡し、今後の相続や売却に支障がない状態を整えることを重視しました。E様ご自身は「相続登記だけのつもりだったけれど、古い登記まできちんと直してもらって安心した」とおっしゃっていました。
結果として、相続登記と滅失登記を同時に完了し、不動産の権利関係が完全に整理されました。これにより、E様やご家族が今後自宅を引き継ぐ際にもスムーズに手続きが行えるようになりました。
今回の事例のように、古い登記や住所の不一致がある場合、登記申請を受理してもらうための補足資料作成が必要になるケースが多いです。特に長期間放置された相続登記では、書類の欠損や住所の変遷が複雑なことが多いため、経験豊富な専門家に依頼することが大切です。
■お客様の声
20年以上も登記をしていなかったので、何から手をつければいいのか分からず不安でした。娘たちもそれぞれ離れて暮らしているため、自分だけで書類を集めたりやり取りをするのは難しいと思っていました。
さえき事務所さんでは、娘たちとの書類のやり取りもすべて代わりに進めてくださり、私は自宅で印鑑を押すだけで手続きが完了しました。さらに、建て替えの際に必要だった「古い建物の登記の抹消」がされていなかったことまで気づいてくださり、まとめて整理してもらえて本当に助かりました。
もし自分だけで登記を進めていたら、必要な書類が足りず途中で止まっていたと思います。今回お願いして、不安がすっかりなくなりました。これで安心して次の世代に家を引き継げます。