■事例の背景
S様のお父様が亡くなられたのは、長年住み慣れた横浜市内のご実家でのことでした。ご家族は、お母様(80代)と、長男であるS様、そして弟様の3名。お母様は高齢ながらもご自宅での生活を続けたいとのご希望があり、S様ご兄弟もその意向を尊重したいと考えておられました。
お父様の遺産は、自宅不動産と預貯金、生命保険など。ご家族の共通の希望として「自宅はお母さん名義にして、安心して住み続けてもらいたい」という思いがありました。しかし一方で、S様は「母が高齢のため、今後認知症などになった場合に財産が凍結されてしまうのではないか」「遺産の配分が母に偏りすぎて、税金の面で問題にならないか」といった不安を感じておられました。
また、弟様も「兄が全て取り仕切るのは助かるが、将来のトラブルは避けたい」と慎重な姿勢を見せており、家族全員が“円満かつ公平に”手続きを進めたいという思いを共有していました。
複数の相続人が関わる中で、単なる名義変更だけでなく、今後の生活と財産管理まで見据えた相続対策が必要であると感じたS様は、相続や家族信託の実績が豊富なさえき事務所へご相談くださいました。
■当事務所からのご提案
S様のご相談を受けた際、まず丁寧にヒアリングを行い、「ご家族が望む理想の形」と「法的・税務的な安全性」を両立させるためのプランを整理しました。お母様は80代と高齢であり、一部判断に迷われる場面もありましたが、当事務所でご自宅に訪問して直接お話を伺ったところ、遺産分割に関する判断能力は十分にあると確認できました。
まず前提として、ご家族の希望は「お母様がこれまで通り自宅に安心して住み続けられること」。しかし、お父様名義の財産をすべてお母様へ相続させると、遺産の偏りによる税負担や、将来の認知症リスクによる資産凍結が懸念されました。
そこで当事務所では、まず税理士と連携し、遺産全体の構成と課税リスクを精査。その上で、**「不動産はお母様が相続し、預貯金の一部をS様・弟様が相続する」**という基本方針を立てました。
ただし、生命保険金の受取人がすべてお母様となっていたため、結果的にお母様の取得額が他の相続人よりも多くなる見込みでした。この不公平を解消するために、**「代償分割」**という方法を提案。具体的には、相続手続き完了後にお母様からS様・弟様へ代償金を支払う内容を遺産分割協議書に盛り込みました。これにより、兄弟間での公平性を保ちつつ、税務面でも適正な処理が可能になりました。
さらに、S様が強く懸念されていたのが「お母様が将来認知症になった際、自宅を管理できなくなるのでは」という点です。このような場合、成年後見制度を利用する選択肢もありますが、資産の使い道が制限されるなど柔軟性に欠ける側面があります。
そこで当事務所では、家族信託の仕組みを導入し、お母様を「委託者兼受益者」、長男であるS様を「受託者」として設定。これにより、お母様が元気なうちはこれまで通り生活を続け、もし判断能力が低下しても、S様が信託契約に基づいて自宅の管理・修繕・処分などを適切に行える体制を整えました。
この仕組みにより、将来の資産凍結リスクを回避しつつ、お母様の生活を安定的に支えることができるようになりました。
最終的に、相続登記・預貯金の名義変更・代償金の清算・家族信託契約の締結まで、すべての手続きを当事務所がワンストップでサポート。S様からは「法律・税務・家族関係の全てに配慮した提案で安心できた」とのお言葉をいただきました。
今回の事例は、単なる遺産分割にとどまらず、相続後の生活と将来のリスクまで見据えた包括的な支援を行った好例となりました。
■お客様の声
父の相続は、自宅の名義や母の将来のことまで関係していたため、どこから手をつければいいか分からず悩んでいました。高齢の母に無理をさせたくなかったので、できるだけスムーズに、そして家族みんなが納得できる形で進めたいと思っていました。
さえき事務所さんには、不動産や預貯金など遺産全体の手続きを一貫してお任せでき、さらに税理士さんとも連携して相続税にも配慮した提案をしていただきました。特に、母の名義にした後の管理を心配していたところ、家族信託という方法を提案していただき、長男である私が母の代わりに自宅を管理できるように仕組みを作ってもらえたのは本当にありがたかったです。
相続のことだけでなく、その後の生活や家族の関係まで考えた提案をしてもらえたことで、安心して手続きを終えることができました。