■事例の背景
H様のお父様が亡くなられたのは、体調を崩してから間もなくのことでした。生前に公正証書遺言を作成されており、「自宅不動産を長女のHに相続させる」と明記されていました。さらに、遺言の内容を実現するために、父の旧知の弁護士が「遺言執行者」として指定されていました。
遺言書の内容が明確であったため、当初H様は「このまま弁護士の先生にお願いすれば問題なく進む」と考えていたそうです。ところが、いざ手続きを始めようと弁護士に連絡を取ろうとしたところ、事務所はすでに閉鎖されており、電話もつながらない状態。インターネットで調べても消息が分からず、どうすればよいか分からないまま時間だけが過ぎていきました。
不動産や預貯金などの名義変更を進めるにあたって、銀行や法務局からは「遺言執行者が行う手続きが必要」と案内され、H様ご自身ではどうにもできない状況に。法律の知識がない中で、「遺言執行者がいないと相続手続きができないのか」「新しい弁護士を探さないといけないのか」といった不安が募り、途方に暮れていたそうです。
そんなとき、インターネットで「相続登記に強い司法書士」として評判のあった当事務所を見つけ、相談してみようと決意されたのがきっかけでした。
■当事務所からのご提案
H様のケースでは、「遺言執行者が指定されているが、その人物と連絡が取れない」という点が最大の問題でした。通常、遺言執行者が指定されている場合、原則として相続手続きはその執行者が行う必要があります。しかし、遺言執行者が死亡・廃業・所在不明などの事情で業務を果たせない場合、手続きを前に進めるためには法的な対応を取る必要があります。
まず、不動産登記については、遺言書の内容が「H様に不動産を相続させる」と明確に記載されていたため、遺言執行者の関与がなくても手続きを行うことが可能でした。そこで、当事務所ではH様からの委任に基づき、相続登記を先行して完了させる方針をご提案しました。これにより、少なくとも不動産に関する名義変更を早期に完了させ、住まいに関する不安を取り除くことができました。
一方で、預貯金やその他の金融資産については、銀行側が「遺言執行者による手続きでなければ対応できない」としており、このままでは資金の引き出しや名義変更ができない状態でした。そこで当事務所では、まず遺言執行者として指定されていた弁護士の所在を確認するため、弁護士会への照会や、遺言書に記載された住所宛への書面送付など、複数の手段を講じました。
その結果、弁護士はすでに廃業しており、事実上、遺言執行者としての職務を果たせない状態であることが判明しました。
この場合、家庭裁判所に申し立てを行い、新たな遺言執行者を選任することが可能です。当事務所ではH様にその手続きをご提案し、**「家庭裁判所に対する遺言執行者選任申立」**をサポート。結果として、H様ご本人が正式に新しい遺言執行者として選任されました。
この選任後、H様名義で預貯金・証券・その他資産の相続手続きが可能となり、遺言書の内容を確実に実現することができました。
本件のように、「遺言執行者が行方不明」「すでに亡くなっている」「弁護士が廃業している」といったケースは決して珍しくありません。放置してしまうと、相続手続きが長期間進まず、資産の管理や税務申告にも支障をきたすおそれがあります。
当事務所では、こうした特殊な相続にも対応できるよう、家庭裁判所への手続き・登記・金融機関との調整までを一貫してサポートしています。結果としてH様は、不動産も預貯金もすべての相続手続きを無事完了され、「これでようやく父の遺志を形にできた」と安心されたご様子でした。
■お客様の声
父の遺言書で弁護士の先生が遺言執行者に指定されていたのですが、連絡が全く取れず、どうしたらいいか分からず困っていました。銀行からも「遺言執行者でなければ手続きできません」と言われ、本当に途方に暮れていたところ、さえき事務所さんを見つけて相談しました。
弁護士会への照会や手紙の送付などをして現状を確認してくださり、最終的には裁判所に手続きをして私を新しい遺言執行者に選任してもらう形で進めてくださいました。不動産の登記も預金の手続きも全て完了し、ようやく父の遺志を実現できて心から安心しました。
自分だけでは到底できなかったと思います。特殊な事情にも丁寧に対応してくださり、本当に感謝しています。