[不動産(売買)]
被害額14.5億円の“法人乗っ取り”地面師事件──狙われやすい不動産と5つの防衛策
- 投稿:2025年06月25日
行方不明の共有者がいる土地や建物、マンションなど、不動産の売却に苦慮していませんか?本記事では、従来の手続きの課題と、2023年4月にスタートした新制度を徹底解説。売却の可能性をグッと高めるヒントをお届けします。
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地面師とは?その手口を整理
地面師とは、不正書類を使って不動産の所有者を偽装し、不動産売買を仕掛け多額の代金を詐取する詐欺団体のこと。過去にNetflixドラマの題材にもなりました。
代表的な地面師事件は以下のとおり。
- 2017年「積水ハウス事件」:被害額 約63億円
- 2013年「アパホテル事件」:被害額 約12.6億円
- 2015年「渋谷・華僑偽装事件」:被害額 約6.5億円
これらの大型詐欺事件は数年ごとに発生し、2025年6月に大規模な法人乗っ取り型の事件が発生しました。
2025年最新事件の概要
- 場所:大阪市中央区内の3箇所(店舗+共同住宅など)
- 所有者:70代の女性が代表を務める会社名義
- 手口:
- 偽造借用書を作成し、被害代表者の住民票を不正取得
- 取得情報で偽造免許証を準備
- 偽免許証により印鑑登録し、印鑑証明書を取得
- 法人の代表者変更登記を申請
- 法人名義不動産を14.5億円で売却
司法書士視点で特に問題となるのは、法人の代表者変更の登記が“形式上は正当”に見える点です。このような法人乗っ取り型で売主に成りすまされた場合、通常の不動産取引現場では判別が難しいのです。
地面師に狙われやすい不動産の特徴
地面師事件を完全に防ぐことは現状難しいのですが、不動産取引に当たって注意すべきポイントは存在します。
以下のようなポイントが複数当てはまる場合、特に警戒が必要です:
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| 取引価格が大規模(億単位) | 少額ではリスクが大きすぎるため、詐欺団は数億円規模をターゲットに。 |
| 権利証がない or 提示を拒否 | 偽造権利証を使った詐欺が横行中。 |
| 抵当権が設定されていない“キレイな物件” | 銀行担保があると資金移動の痕跡が明らかになるため狙われにくい。 |
| 実需性が低い(更地/賃貸用物件) | 売主の居住実体がないので現地確認をしてもなりすましに気付けない |
| 売主の周りに複数の人物が関与 | 地面師は単独犯ではなくグループで活動するため複数名が関与する |
失敗しないための5つの対策
- 法人所有の場合は代表者変更登記を定期チェック
月額数百円で登記情報閲覧可能。月1回の確認で不正を早期発見できる。 - 売買段階で本人確認と権利証の真正性を入念に
ICチップ付き権利証は専用読み取り機で確認。不自然な点を見逃さず確認する習慣を。 - 事前の“売主ヒアリング”を徹底
本物の売主しか知り得ない情報(所在地の経緯、近隣住民の話など)を自然な会話から聞き出す。 - 代金支払いタイミングの工夫
売買契約書で「登記完了後に残金支払い」など段階分けを設定。アメリカのエスクロー(仲介預託)制度に近い方法も導入検討。 - 経験ある専門家に依頼する
司法書士(特に地面師対策に長けたベテラン)や不動産業者のチェックを必ず。この一手間が高額詐欺回避につながります。
おわりに
今回の14.5億円“法人乗っ取り”地面師事件は、スキームの巧妙さにおいて過去最大級。法人登記を利用した代表者変更による乗っ取り手口は、個人名義物件を狙う従来型とは一線を画します。
そのため、売買価格や書類の状態、登記情報の確認など、事前準備と徹底チェックが不可欠。また、信頼できる専門家と連携することで、リスクを劇的に低減できます。高額不動産取引はリスクを正しく認識し、対策を講じながら進めることが重要です。
この記事が「地面師事件とは何か」「どうすれば防げるのか」を理解する一助になれば幸いです。今後も地面師対策に関する最新情報を発信しますので、ぜひご期待ください。