[遺言・後見・家族信託]
2025年10月スタート!オンラインで作れる「デジタル公正証書遺言」とは?
- 投稿:2025年09月04日
2025年10月(令和7年10月)から、遺言制度に大きな変化が訪れます。これまで公証役場に足を運ばなければ作成できなかった公正証書遺言が、ついにオンラインで作れるようになるのです。
この新しい仕組みは「デジタル公正証書遺言」と呼ばれ、相続や終活を考えている方にとって大きな朗報となります。本記事では、制度の概要、手続きの流れ、メリット・注意点まで、司法書士の視点からわかりやすく解説します。
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目次
公正証書遺言とは?おさらい
まずは従来の公正証書遺言について簡単に振り返りましょう。
公正証書遺言は、公証人が関与して作成する遺言で、最も法的安定性のある形式です。
- 公証役場で公証人に作成してもらう
- 証人2名の立会いが必須
- 原本は公証役場に保管され、偽造や紛失のリスクが少ない
その反面、課題もありました。
原則として平日日中に公証役場へ出向かなければならないため、地方在住者や高齢者、身体の不自由な方にとっては大きな負担だったのです。
2025年10月から始まる「デジタル公正証書遺言」
こうした不便を解消するために導入されるのがデジタル公正証書遺言制度です。
ポイントは「遺言内容や効力は従来と同じ。ただし作成の手続きがオンライン化される」という点です。
公証人が関与する点や証人2名が必要な点は従来と同じですが、次のように手続きの方法が変わります。
オンライン化で変わる手続きの流れ
1. 申請(嘱託)の方法
従来:
公証役場に出頭し、書面や印鑑証明書などを提出。
今後:
インターネット経由で嘱託可能。電子署名を付与することで手続きが完了します。
2. 本人確認と面談
従来:
公証人と直接対面して、本人の意思や内容を確認。
今後:
希望者は Web会議システム(例:Zoom) を使い、公証人とオンラインで面談可能。
ただし、公証人が「成りすましの恐れがある」「意思確認が難しい」と判断した場合は、対面が求められることもあります。
3. 遺言書の作成と保管
従来:
紙に署名・押印し、公証役場で原本を保管。
今後:
電子データとして作成・保管。署名はマイナンバーカードを使った電子署名で行います。
4. 正本・謄本の交付
従来:
書面で交付。
今後:
従来通り紙での交付も可能ですが、電子データでの交付も選べます。
ただし現状では銀行や役所などが紙の遺言書を求める場面も多いため、当面は紙と電子を併用する形になると予想されます。
本人確認の方法
オンラインで行う以上、本人確認はとても重要です。
想定されている方法は次の2つです。
- マイナンバーカードや運転免許証を使った顔認証
→ デバイスのカメラで本人と写真を照合、公証人も目視確認。 - Web会議での面談
→ 公証人や証人とオンラインで会話し、意思確認を行う。
これにより、成りすましや本人以外による不正作成のリスクを下げます。
制度のメリット
① 利便性の向上
最大のメリットはやはり「どこでも作れる」ことです。
自宅や介護施設にいながら遺言書を作成できるため、遠方の方や高齢者にとって大きな負担軽減になります。
② 安全性の強化
電子署名と電子データ保管により、改ざん・紛失のリスクが減少します。
紙の遺言書よりもセキュリティ面で安心できる仕組みといえます。
③ 手続きの効率化
証人や公証人との日程調整もオンラインで行えるため、作成までのスピードが早まる可能性があります。
注意すべきポイント
便利な一方で、注意点もあります。
- インターネット環境が必須
安定した通信回線やパソコン・スマホが必要です。マイナンバーカードを使う場合はカードリーダーも必要になります。 - 証人2名の立会いは必要
オンライン化しても法律上の要件は変わらず、証人は必須です。 - 導入初期のトラブル
制度開始直後は、システムの不具合や公証人側の対応に慣れが必要で、多少混乱する可能性があります。
まとめ:相続・終活に新しい選択肢を
- 2025年10月から、公正証書遺言がオンラインで作成可能に。
- 本人確認は顔認証とWeb会議を組み合わせ、電子署名を利用。
- 作成された遺言は電子データとして安全に保管。
- 利便性・安全性・効率性が大幅に向上する一方、インターネット環境や証人の確保は依然として必要。
日本の相続制度にとって、今回の改正は大きな一歩です。
「遺言を作りたいけれど、公証役場に行くのは大変だ」と感じていた方にとっては、まさにチャンスといえるでしょう。
これから相続や終活を考える方は、デジタル公正証書遺言の活用を検討してみてはいかがでしょうか。