[相続]
不動産をお金に換えて遺贈する方法
- 投稿:2024年09月06日
- 更新:2024年09月19日
内縁の配偶者や生前お世話になった人に対して特定の財産を相続させるためには遺言書を作成する必要があります。
預貯金や有価証券など、換価するのにそれほど手間がかからないものであれば遺産を受ける側の人に対して負担はないのですが、不動産は簡単に換価(売却)することができないため、場合によっては負担になってしまうことがあります。
そこで、今回は不動産を負担なく相続させる方法の一つである「清算型の遺贈」という方法について相続専門の司法書士が解説していきます。
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遺贈は遺言書の作成が必須
遺贈とは、内縁関係の配偶者や生前お世話になった人など法定相続人以外の人や法人に対して遺産相続させる場合をいいます。正確には相続人に対しても遺贈をすることはできるのですが今回の記事の中では気にしなくて大丈夫です。
遺贈の中で、被相続人の不動産を遺言執行者が売却して現金化したうえで、特定の人や法人に対して遺贈する方法を清算型遺贈といいます。
さて、通常の遺贈を含め、清算型遺贈をするには、遺言でその旨を定めておかなければなりません。遺言書作成時の注意点としては、必ず遺言執行者を定めておくことです。この理由は後述します。
清算型ではない通常の遺贈の登記手続き
遺贈の手続きに遺言執行者が必須である理由を理解するため、遺贈の登記手続きについて説明します。通常の遺贈とは、売却せずに不動産を受遺者(遺贈を受ける人)に名義変更する場合です。
遺言者が死亡すると、遺言書のとおり遺贈の効力が発動します。遺贈によって不動産の所有権は受遺者のものになるのですが、登記手続き上は死亡した現在の登記名義人である遺言者から受遺者とダイレクトに名義変更することはできません。
いったん、法定相続分の割合で遺言者の法定相続人の名義に変更してから、その後に受遺者へ名義変更しなければなりません。
法定相続人は、第三者に遺贈するだけのために登記名義を一旦自分たちに移し、その後受遺者に名義を移すことにも協力しなければなりません。これらの手続きを受遺者から法定相続人に対して協力を求めた場合に快く応じてくれるでしょうか。被相続人の恩人への遺贈の場合など特別な事情がない限り難しいのではないかと思います。
基本的に遺贈というのは相続人に対して行われることはありません。なぜなら、わざわざ遺贈をしなくても相続人には相続権があるので、遺産を相続させることが出来るからです。あえて遺贈をするということは、相続人ではない第三者に遺産を譲りたい事情があるのです。
ここで、遺言執行者がいれば、遺言者→法定相続人→受遺者への各登記名義変更の手続きを法定相続人の関与なしに行うことが出来るのです。相続人以外の第三者へ遺贈をする場合は遺言執行者を指定していないと面倒なことになりそうというのはご理解いただけると思います。
清算型遺贈の登記手続き
次に、清算型遺贈の登記手続きをご説明します。繰り返しになりますが、清算型遺贈は、通常の遺贈と違って、受遺者に対して不動産を売却換価して現金化して遺贈する手続きです。
清算型遺贈であっても最初は、遺言者→法定相続人へ名義変更をします。
次に、清算型遺贈は不動産を売却しますので、法定相続人→買主へ名義変更をします。そして、買主から支払われた売買代金を受遺者に引き渡すのです。
遺言者→法定相続人→買主と名義は移っていくので、登記簿上に受遺者の名前は出てきません。
登記簿上はあたかも法定相続人が売主となって買主へ不動産を売ったかのように記載されます。
清算型遺贈の場合も遺言者から買主までの登記手続きは法定相続人に代わって遺言執行者がすることが出来ます。買主との売買契約なども遺言執行者が法定代理人の関与なしにすることになります。
清算型遺贈の注意点
清算型遺贈では対象である不動産を売却するので売却益が出た場合には譲渡所得税が発生します。
上記のとおり、登記簿上に受遺者の名前が一切出てこないことから清算型遺贈では誰に譲渡所得税が課税されるか疑問に思われるかもしれません。
登記簿上では、法定相続人から売買を登記原因として買主へ名義変更されるので、法定相続人を売主と見ると法定相続人に対して課税されることになります。もしくは、売却代金を実際取得するのは受遺者なのですから、実際の売主は受遺者であるという考え方もできます。
結論として、最終的に売却した金銭は受遺者のものになるので、この税金は受遺者が納めるべきということになります。
ただし、もし受遺者が税金を納めなければ、登記簿上には受遺者の名前は出てきませんので税務署から登記簿上では売主と見える法定相続人へ納税するよう連絡が行ってしまいます。
清算型遺贈に場合は遺言執行者が各手続きを行いますので、もし税務署から連絡があったら何も知らない法定相続人にとっては青天の霹靂でしょう。
よって、清算型遺贈の遺言執行者は、受遺者がきちんと納税するように管理するか、売却換価した後に諸経費と併せて納税資金を差し引いて金銭を受遺者に引き渡し、遺言執行者が譲渡所得税の納税手続きをするなどした方が良いでしょう。
まとめ
- 遺贈は遺言によってしなければならない
- 通常の遺贈も清算型の遺贈もいったん遺言者の法定相続人の名義にしなければならない
- 通常の遺贈も清算型の遺贈も遺言執行者が法定相続人に代わって手続きをすることが出来る
- 清算型遺贈の場合で譲渡所得税が発生するケースは、納税を遺言執行者がきちんと管理する必要がある
遺言執行者になると、遺言の内容を実現するためかなりのボリュームの仕事量と責任を負う事になります。特に、清算型遺贈ともなれば、売買契約から何から手配しなければなりませんので大変ですし、譲渡所得税の納税についても受遺者へ説明しなければなりません。
一般の方が遺言執行者になることもあるかとは思いますが、弁護士、税理士、行政書士の方が就任するケースも多いと思います。特に清算型遺贈はけっこうレアなケースですので、こういった登記手続きに慣れた司法書士をパートナーにされると良いかと思います。当事務所では、清算型遺贈を伴う手続きの実績も多数ありますので、遺言書の作成から清算型遺贈の手続きまでお悩みの方は是非ご相談ください。