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田舎の空き家(負動産)を相続放棄!その後の「管理義務」と正しい後始末を徹底解説

  • 投稿:2026年04月07日
  • 更新:2026年05月22日
田舎の空き家(負動産)を相続放棄!その後の「管理義務」と正しい後始末を徹底解説

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相続放棄をしても残る「管理義務」とは?

相続放棄をした人に課せられる空き家の管理に関するルールは、令和5年(2023年)4月1日に施行された改正民法によって大きく変わりました。まずは、この新しいルールを正しく理解することが重要です。

改正前の問題点:「管理継続義務」のジレンマ

以前の民法では、相続放棄をした者は「次の相続人が財産の管理を始められるようになるまで、自分の財産と同じ注意義務をもって管理を継続しなければならない」と定められていました。 これにより、「相続放棄をしたのに、遠方の空き家の草刈りや修繕をいつまでも続けなければならない」という理不尽な状況が生まれ、社会問題化していました。

また、相続放棄した後、管理責任を負う相続人の範囲について明確な基準がなく、誰に管理責任があるのかよくわからないといったこともありました。

改正後の新ルール:「現に占有」しているかどうかが鍵

この問題を解決するため、令和5年の改正民法(第940条第1項)では、義務を負う人の要件が明確化されました。

【改正民法第940条1項】 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は相続財産の清算人に当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の保存をしなければならない。

つまり、「相続開始時(親が亡くなった時)に、その空き家に一緒に住んでいた」など、実際に不動産を占有していた人にのみ「保存義務」が残ることになったのです。

逆に言えば、親が一人で田舎に住んでおり、子は遠方の都市部に住んでいて実家を全く占有していなかった場合、子が相続放棄をすれば、原則としてその空き家の管理義務は負わないことになります。これは、負動産に悩む相続人にとって非常に大きな救済措置と言えます。

「管理義務」を負う場合、何をしなければならないのか?

もし、あなたが親と同居しており、「現に占有している」状態で相続放棄をした場合、次の管理者が決まるまで「管理義務」を負うことになります。

この「管理義務」とは、具体的にどこまでやればいいのでしょうか。

管理義務の範囲

管理義務とは、「対象の不動産が滅失したり、価値が大きく毀損したりしないように現状を維持すること」を指します。具体的には以下のような対応が含まれます。

  • 危険箇所の応急処置: 台風で屋根瓦が飛びそう、ブロック塀が倒れそうといった場合の最低限の補強・修繕。
  • 不法投棄の防止・害虫対策: 著しく周辺環境を悪化させないための最低限の清掃や戸締まり。

自己の財産に対するのと同一の注意(専門用語で「自己のためにするのと同一の注意義務」)で足りるとされているため、プロの業者のような完璧な管理までは求められませんが、「明らかに危険な状態を放置すること」は許されません。

放置して他人に損害を与えた場合のリスク

もし管理義務を怠り、空き家が倒壊して隣の家を壊してしまったり、剥がれた屋根材が通行人に当たってケガをさせたりした場合、管理義務を負う元相続人が損害賠償責任を問われる可能性があります。 「すでに相続放棄したから自分には関係ない」という言い訳は通用しないため、注意が必要です。

次の相続人へのバトンタッチの罠

では、この管理義務は「いつ」終わるのでしょうか。 法律上は「相続人または相続財産の清算人に当該財産を引き渡すまでの間」とされています。

自分が相続放棄をすると、法律上のルールに従って次の順位の人に相続権が移ります。 (例:第一順位の子が全員放棄 → 第二順位の親(祖父母)へ → 親が亡くなっていれば第三順位の兄弟姉妹・甥姪へ)

ここでよくあるトラブルが、「親族間の連絡不足」です。 自分が相続放棄をしたことによって、疎遠だった叔父や叔母に突然「負動産」の相続権が回ってしまいます。道義的なトラブルを避けるためにも、自分が相続放棄をする際は、次順位の親族へ事前に「私も放棄するので、あなたも期限内(3ヶ月以内)に手続きをしたほうがいい」と通知できる場合は通知しておくと、不要な争いを防ぐ防波堤となります。

完全に手放すための最終手段「相続財産清算人」の選任

親族全員が相続放棄をした場合、最終的にその不動産は「相続人不在」となります。 しかし、相続人が誰もいなくなったからといって、不動産が自動的に国のものになるわけではありません。ここが最も厄介なポイントです。

現に占有していて管理義務を負っている人が、その義務から完全に解放されるためには、家庭裁判所に申し立てを行い「相続財産清算人(旧:相続財産管理人)」を選任してもらい、その清算人に財産を引き渡す必要があります。

相続財産清算人とは?

相続財産清算人とは、相続人がいない財産を整理し、債権者への支払いや国庫への帰属(国に引き取ってもらう手続き)を行うために、家庭裁判所から選任される人物です。通常は、弁護士や司法書士などの専門家が選ばれます。

費用(予納金)の壁

一見すると素晴らしい制度に思えますが、この申し立てには大きなハードルがあります。それが「予納金(よのうきん)」の負担です。

相続財産清算人が活動するための経費や報酬は、本来であればその亡くなった人の財産の中から支払われます。しかし、田舎の空き家など「売れない不動産」しか残っていない場合、清算人の報酬が支払えません。 そのため、申し立てを行う人(元相続人など)が、あらかじめ裁判所に予納金を納める必要があります。

  • 予納金の相場: 事案や裁判所によって異なりますが、数十万円〜100万円程度になることが少なくありません。

決断のポイント:予納金を払ってでも縁を切るべきか

「相続放棄をしたのに、さらに100万円近く払わなければならないのか」と理不尽に感じる方は多いでしょう。

しかし、倒壊リスクのある空き家の保存義務を背負い続け、将来的に数百万単位の損害賠償請求を受けるリスクや、終わりのない精神的負担を考慮すると、「予納金を支払ってでも、相続財産清算人を選任して完全に縁を切る」という選択が、結果的に最も安上がりで安心できる後始末となるケースが多いのです。

相続土地国庫帰属制度は使えるのか?

令和5年4月から、不要な土地を国に引き取ってもらう「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。この制度を使えば空き家も手放せるのでは?と考える方がいますが、ここには決定的な落とし穴があります。

この制度は「更地(建物が建っていない土地)」であることが絶対条件です。 つまり、空き家が建っている場合は、自費で建物を解体して更地にしなければ、国は引き取ってくれません。解体費用に数百万円かかることを考えれば、やはり相続放棄+相続財産清算人のコンボを選択する方が現実的なケースが大半を占めます。

まとめ:負動産の「後始末」は専門家と二人三脚で

田舎の空き家など、負の不動産の相続放棄とその後始末について解説しました。 ポイントを振り返ります。

  1. 相続放棄をしても、同居等で「現に占有」していた場合は管理義務が残る(令和5年民法改正)。
  2. 全く占有していなかった場合は、放棄によって管理の責任から解放される可能性が高い。
  3. 親族全員が放棄した後、完全に縁を切るには「相続財産清算人」の選任が必要。
  4. 清算人の選任には高額な予納金がかかるが、将来のリスクを断ち切るための必要経費と捉えるべき。

相続放棄は「被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内」という厳しいタイムリミットがあります。空き家の状態、ご自身の占有状況、親族関係などを総合的に判断し、適切な手順を踏まなければなりません。

「とりあえず放棄すれば終わりだろう」という安易な自己判断は禁物です。負動産の処理は法的にも実務的にも非常に難易度が高いため、相続開始後、できるだけ早い段階で司法書士などの相続の専門家に相談することを強くお勧めします。

不要な財産の連鎖をあなたの代でしっかりと断ち切り、子どもたちや次の世代に「負動産」という重荷を残さないための正しい後始末を行いましょう。

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