[会社・法人]
登記簿謄本の社長の住所を非公開にできるようになります。
- 投稿:2024年09月20日
今回は会社の登記に関係する最新のトピックをご紹介します。
2024年10月1日から登記申請の際に申し出ることによって登記簿上の代表者の住所を非表示(市区町村までは表示)にすることができるようになります。
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目次
社長の住所が公開から非公開になった理由
これまで、会社の代表者の住所は登記簿謄本上(履歴事項証明書・登記事項要約書・登記情報提供サービスを含む)で公開されていました。登記簿謄本は最寄りの法務局で誰でも特に理由を説明することもなく取得することができます。
世界のトヨタ自動車などどんな大企業であっても登記簿謄本を取って社長個人の住所を簡単に確認することができるのですが、今後はこういった大企業はおそらく社長の住所を非表示にするようになるのではないでしょうか。
なぜ、代表者の住所が公開されているのかというと、一言でいうと「取引の安全のため」です。例えば、金融機関等は、新規の会社と取引をする際には、その会社の登記簿謄本を見て、どのくらいの規模(資本金)なのか、役員誰なのか、何人いるのか、どんな事業をやっているのかなどを確認します。
そして、万が一、その取引した会社とトラブルになった場合損害賠償請求するときに訴訟を起こす裁判所はその会社の本店所在地を管轄する裁判所が原則となり、すでに本店が無くなっている場合などには代表者の住所所在地を管轄する裁判所へ訴訟提起をすることになります。自然人たる個人違って生身の肉体のない法人である会社はその情報が公示されていないと取引を安全に行うことができないのです。
しかし、近年は個人情報の保護も声高に叫ばれていて、社長個人の住所を誰でも知ることのできる状態について問題視する声も大きくなってきました。
そこで、経済界からの要請もあり、社長の住所を非表示にできる法改正がなされることになりました。
住所を非表示にした場合の注意点
個人情報の保護の面で住所を非表示にすることは良いのですが、登記簿謄本から社長個人の住所を確認することができなくなるため、金融機関で融資を受けたり、不動産取引等に当たって必要な書類が増えるなど一定の影響が生じる可能性があります。
これまでは、登記簿謄本上の社長の住所氏名と社長個人がもっているID(運転免許証など)の住所氏名が一致していれば、登記簿謄本と個人IDの繋がりで社長であることの証明になりましたが、住所を非表示にした場合は、登記簿謄本とIDだけでは社長であることが証明できません。非表示後は社長であることを証明するための書類が増える可能性があります。
また、もし社長の住所を非表示にした場合でも、引っ越し等で住所を変更した場合には住所変更の登記はしなければなりません。登記簿謄本上で非表示になっているだけであって、法務局内部では代表者の住所はしっかり管理されますし、何かしらの事由で情報開示請求をした場合にまったく住所がわからない状態だと困りますよね。
住所を非表示にした場合は、社長自身も登記簿謄本を見て住所変更の登記をしたかどうかわからなくなってしまうこともあるので、住所が変わった場合はすぐに変更登記をするようにしましょう。
住所非表示措置の要件
代表者の住所は無条件に非表示になるわけではなく、非表示にするよう登記申請の際に法務局へ申し出なければなりません。
登記申請と同時に申し出ること
設立、代表取締役の就任や再任、住所移転など代表取締役の住所が登記されることになる登記申請と同時にする場合に限ってすることができます。つまり、非表示の申出だけ単独ですることはできません。
住所非表示の申出をする場合の申請書の見本は以下のとおりです(※法務省HPより)
非表示申出にあたっては所定の書面の添付が必要
登記申請書に非表示の申出を記載するだけではなく、所定の書類を添付する必要があります。上場会社と非上場会社で異なりますので紹介します。
上場会社の場合
・上場されていることを認めるに足りる書面
例)金融商品取引所のホームページの写しなど
上場会社以外の場合
・株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
例)株式会社が受取人として記載された配達証明書
・代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書
例)住民票、戸籍の附票、印鑑証明書など
・株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面
例)司法書士が犯罪収益移転防止法に規定に基づき確認を行った本人特定事項に関する記録の写し
その他の注意点など
今まで挙げてきたもの以外の注意点などを記載します。
住所変更登記の際は、再度申出をしないと非表示が継続されない
住所非表示の場合でも引っ越し等で住所が変わった場合には住所変更登記が必要ということは伝えましたが、その登記の際に非表示の申出をあらためてしないと引っ越し後の住所が公開されてしまうので注意しましょう。
再任の場合は自動継続
株式会社の代表取締役の任期が満了し、再任した場合は、あらためて非表示の申出をしなくても住所の非表示は自動継続されます。
非表示が終了する場合
自分自身で非表示措置終了の申出をした場合の他、会社の実在性が認めれない場合、上場会社が非上場会社になった場合、清算結了後に復活した場合には非表示の措置が終了することになります。
最後に
現在会社経営をされている方、資産管理会社を持っている方、これから起業する方など登記簿謄本上に社長個人の住所が公開されていることに抵抗感のある方は多いと思います。
新しい制度のため、住所を非表示にした場合に契約や取引上の弊害がどのくらいでるかはこれからの運用しだいにはなりますが、個人情報保護のために住所は公開したくないという方はこちらの新制度を利用してみてはいかがでしょうか。