[遺言・後見・家族信託]
成年後見制度が大きく変わります——2027〜2028年施行予定の改正ポイントをわかりやすく解説
- 投稿:2026年05月22日
「成年後見制度は使いにくい」「一度始めたら終わらない」「費用が高い」——こうした声は、相続・認知症対策の相談現場でも長年聞かれてきました。
その成年後見制度が、いよいよ大きく変わろうとしています。2025年4月、民法改正案が閣議決定され、国会での審議を経て、2027〜2028年頃の新制度スタートが見込まれています。
この記事では、現行制度の問題点から改正の具体的なポイント、そして「家族信託や任意後見はもう不要になるのか?」という疑問まで、一般の方にわかりやすく解説します。
※動画でも解説していますので是非ご覧ください。チャンネル登録もよろしくお願いします!!
目次
そもそも成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症や知的障害などによって判断能力が低下した方を法律的に保護・支援するための制度です。本人に代わって財産の管理や契約行為を行う「後見人」が選任されます。
現行制度では、判断能力の程度に応じて「後見」「保佐」「補助」の3段階に分かれています。なかでも最も重い「後見」は、家庭裁判所が選んだ後見人(弁護士や司法書士などの専門職が就くことも多い)が、本人に代わってほぼすべての法律行為を行う仕組みです。
現行制度の3つの問題点
改正の背景には、現行制度が抱える根本的な3つの課題があります。
【問題1:一度始めたら終わらない(終身性の問題)】
現行の成年後見制度は、原則として本人が亡くなるまで続きます。「遺産分割のためだけ一時的に使いたい」「不動産の売却が終わったら不要になる」といった場合でも、制度を途中でやめることは基本的にできません。このため「使い始めるのをためらう」という方が非常に多い状態でした。
【問題2:本人の権利が過剰に制限される】
後見が開始されると、本人は自分自身で契約などの法律行為を行う権利が大幅に制限されます。判断能力は低下していても「自分でできること」「自分で決めたいこと」は残っているはずですが、現行制度ではそうした個別の事情が十分に反映されにくい仕組みでした。
【問題3:費用の負担が重い】
専門職の後見人が選任された場合、毎月一定の報酬が発生します。これが長期にわたると家族にとって大きな費用負担となり、「制度を使いたくても使えない」という状況が生まれていました。
新制度はどう変わるのか——5つの改正ポイント
改正案の内容を、現行制度との比較でわかりやすく整理します。
【改正ポイント1:途中でやめられるようになる】
現行制度:原則として本人が亡くなるまで終了できない。
新制度:支援の必要性がなくなれば途中終了が可能に。
これが今回の改正でもっとも大きな変化のひとつです。たとえば「相続が発生して遺産分割協議をするために後見が必要だったが、手続きが終わったので不要になった」という場合、制度を終了できるようになります。必要な場面だけスポット的に利用できる「終われる後見」への転換です。
【改正ポイント2:「後見・保佐・補助」の3段階から「補助」に一本化】
現行制度:判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助の3段階に分類。
新制度:包括的な権限を持つ後見・保佐を廃止し、補助に一本化。
「後見」では後見人がほぼすべての権限を持ちますが、新制度では「どの範囲の代理権・同意権を付与するか」を個別具体的に決めるオーダーメイド方式になります。本人の意思や残っている能力を尊重しながら、必要最小限の支援だけを設定できるようになります。
【改正ポイント3:「特定補助」が新設される】
新制度:判断能力が著しく低下した方を保護するため、例外的な仕組みとして「特定補助」が設けられます。
不動産の売却など重要な財産行為に限って取消権を持つ仕組みです。現行の後見のように「すべてを後見人が行う」のではなく、特に重要な行為に絞って保護する設計になっています。
【改正ポイント4:支援者の交代が柔軟になる】
現行制度:死亡・不正などの限られた理由がない限り、後見人を変更することは困難。
新制度:本人の利益のために必要があれば、ニーズの変化や相性に応じて柔軟に交代が可能に。
たとえば「最初は専門職の司法書士が就いていたが、家族が対応できるようになったので交代したい」といったことも、より柔軟に実現できるようになります。
【改正ポイント5:任意後見・家族信託との併用が明確に推進される】
現行制度:任意後見と法定後見の併用は原則できず、家族信託との役割分担も実務上曖昧な部分があった。
新制度:任意後見や家族信託との組み合わせが制度として推進される。
これまで「家族信託をしていたのに法定後見が始まってしまい、財産管理の役割がどちらになるのか整理が難しい」という場面がありました。新制度ではこうした組み合わせを積極的に活用する方向に整理されます。
家族信託や任意後見は不要になるのか?
「新しい後見制度ができたら、家族信託や任意後見はいらなくなるのでは?」と思われる方もいるかもしれません。
結論から言えば、不要にはなりません。むしろ、組み合わせて使うことがより重要になります。
新制度になっても、後見制度には家庭裁判所が関与し続けます。つまり、「誰をどのような条件で支援者にするか」の最終的な決定権は家庭裁判所にあります。自分の意思でコントロールできる範囲には限界があります。
一方で家族信託や任意後見は、判断能力があるうちに自分自身で設計できる制度です。
たとえば今後考えられる最適な組み合わせとして、
・財産の管理・運用は家族信託に任せる
・医療・介護・身の回りのことは任意後見または新制度の後見を活用する
というハイブリッドの備え方が、より現実的な選択肢として広がっていくと考えられます。
選択肢が増えたということは、逆に言えば「どれを使えばいいか」という判断も複雑になっていくということです。ご自身の状況に合った組み合わせを見極めるために、専門家への相談がこれまで以上に重要になってくるでしょう。
新制度はいつから始まるのか
2026年1月に法制審議会が要綱案を取りまとめ、2025年4月に閣議決定されました。その後、国会での審議を経て法改正が成立すれば、2027〜2028年頃に新制度がスタートする見込みとされています。
現時点では法改正はまだ成立していないため、今すぐ後見制度が必要な状況にある方は、現行法のルールに基づいて進めるしかありません。ただし、将来的に制度の途中終了ができる可能性があることを念頭に置いておくことは大切です。
今からできること——大切なのは「元気なうちの準備」
改正がいつ施行されるかにかかわらず、認知症対策として変わらず重要なのは「判断能力があるうちに備えること」です。
判断能力が低下してしまった後では、家族信託も任意後見契約も結ぶことができなくなります。新しい後見制度を使う場合でも、家庭裁判所への申立てが必要になります。
「まだ元気だから大丈夫」と思っているうちに準備を進めておくことが、ご自身と家族を守る最善の方法です。
まとめ
この記事のポイントを整理します。
・成年後見制度の改正案が2025年4月に閣議決定。2027〜2028年頃の施行が見込まれる
・現行制度の問題点だった「就寝性(終わらない)」「過剰な権利制限」「費用負担」が改善される方向
・後見・保佐・補助の3段階から「補助」への一本化でオーダーメイド化が進む
・必要な期間だけ使えるスポット利用が可能になる
・家族信託・任意後見との組み合わせが制度として推進される
・ただし家庭裁判所の関与は引き続きあるため、家族信託・任意後見の重要性は変わらない
・大切なのは、判断能力があるうちに備えを進めること
成年後見制度の改正は、認知症対策の選択肢を広げる大きな一歩です。ただし、どの制度をどう組み合わせるかは個人の状況によって異なります。「自分の場合はどうすればいいのか」と気になった方は、お気軽にご相談ください。