[相続]
相続したくない「負動産」を手放す方法 3選
- 投稿:2024年09月26日
遺産のなかには地方の山林や原野といった不動産も含まれますが、相続人側からすると「引き継いでも困る」「手放したい」と思ういわゆる「負動産」があります。
こういった「負動産」を手放すにはどうすればよいのか。相続専門の司法書士が「負動産」を放棄する方法を3つ紹介します。
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いらない土地を放棄できる「国の制度」も、あるにはあるが…
2023年4月27日から施行された「相続土地国庫帰属制度」は、相続した不要な土地を手放し、国庫に帰属させられるという制度ですが、いろいろな要件があって使いづらい部分があることも事実です。
そこで今回は、相続土地国庫帰属制度を使わずに「いらない不動産」を放棄する方法を3つ紹介します。
相続土地国庫帰属制度については、別のコラムがあるのでそちらで詳しい内容は確認してみて下さい。→相続土地国庫帰属制度について
①相続放棄をする
まず1つ目は「相続放棄をする」という方法です。
相続したことを知ってから3ヵ月以内であれば、相続放棄によって相続権そのものを手放すという形で、いらない不動産を放棄することができる、考え方としてはとてもシンプルな方法です。
ただし、期間が「3ヵ月」と短く、また、いらない不動産だけでなくすべての遺産を放棄しなければなりません。たとえば、相続財産のなかに相続したい価値のある不動産や現預金、有価証券などがある場合も全部放棄することになりますのでご注意ください。
また、相続人全員が相続放棄をした場合は不動産の管理責任等の問題が残ることもありますので注意しましょう。
<ポイント>
●相続したことを知ってから3ヵ月以内であれば使用可。
●いらない不動産以外にも、すべての不動産を放棄しなければならない。
●相続人全員が相続放棄をした場合、管理責任問題が生じる可能性がある。
②共有持分の放棄
2つ目は「共有持分の放棄」です。これは対象不動産が共有名義の場合にのみ使用できる方法です。
まずは条文をご紹介します。
【民法第255条】
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
たとえば、ある1つの土地をAさん・Bさんが共有名義で持っていた場合、Aさんが自分の持分を放棄すると、Aさんの持分の所有権はBさんのほうへ渡ります。しかも、共有持分の放棄は他の共有者の関与なしに単独でできるので、Aさんが放棄すると決めればその所有権は自動的にBさんのものになります。条文の「放棄した持分は他の共有者に帰属する」というのはこういうことです。
ただし、登記の名義を変更するには、持分が帰属した他の共有者の協力が必要になります。登記は原則、共同申請になるので、「権利を得る人」と「権利を失う人」の2人で申請しなければなりません。これは共有持分の放棄においても同じです。
ですので、例に挙げたように、土地がAさん・Bさんの共有名義になっているなかでAさんが共有持分を放棄した場合、その土地の権利はBさんのもとへ移動しますが、実際に名義を変えるには、AさんとBさんとで“Aの持分をBに移転させる”という登記申請手続きを行うことになります。Aさんが単独で権利自体を放棄することはできますが、手続きをするにあたってはBさんにもお願いしなければなりません。
特に「いらない土地」を放棄するシチュエーションでは、AさんだけでなくBさんも「いらない」と思っているケースもあるでしょう。そういった場合にストレートにBさんの協力を得られるかどうかは気を付けなければなりません。Bさんが手続きに協力してくれない場合では、裁判上の手続きでBさんに権利を渡すという方法も取れますが、そこまでやるかどうかというところも含めて検討が必要です。
<ポイント>
●共有持分の放棄は他の共有者の関与なしに単独でできる。
●放棄した持分は他の共有者に帰属する。
●登記の名義を変更するには持分が帰属した他の共有者の協力が必要。
③不動産会社による負動産引き取りサービス
3つ目は「不動産会社による負動産引き取りサービス」を利用する方法です。インターネットで検索すると、不要な不動産(負動産)の引き取りを積極的に行っている不動産会社が見つかります。ただし、価値のない不動産(田舎の山林など)に関しては、数十万円から建物の解体などがある場合は数百万円の費用を出さないと引き取ってもらえない場合もあります。
注意しなければならないのは、相続したあとに不動産会社側からアプローチをかけてくる場合です。相続登記をすると、法務局のほうで照会をかければ相続した物件を一覧で見ることができますし、バブル期に開発されるとされた物件を購入した人のリストが出回っているとも聞きます。
他にも名簿屋などから顧客リストを手に入れて不動産会社からアプローチをかけてくる場合があるのですが、なかには詐欺まがいのことをする会社もあります。
たとえば「田舎の山林を相続されましたよね、うちで引き取りますよ」というように声をかけておきながら、「土地の測量が必要なので・・・」「草木が生い茂っているので草刈り費用が必要・・・」など、色々理由をつけて費用を払わされた挙句、そのまま持ち逃げされてしまったりりする場合があります。
また、こちらとしては負動産を手放したいのに、なぜか別の「いらない不動産」の名義を取得させられるなどの被害もあります。特に高齢者が狙われやすく、当事務所にもたまに相談が来ます。費用を払わされるわ、他のいらない不動産までなぜか自分のものにさせられるわ…ととんでもない事態になるも、不動産会社に話をしようにももう連絡がつかない。このような詐欺まがいのことをする不動産会社も存在しますので、不動産会社側からアプローチをかけてくる場合は特に注意してください。
<ポイント>
●ネット検索すると、不要な不動産(負動産)の引き取りを積極的に行っている不動産会社を見つけられる。
●価値がない不動産の場合(田舎の山林など)は有償でないと引き取ってもらえない。
●相続後に不動産会社からアプローチしてくる場合もあり、なかには詐欺まがいのことをする会社もある。
最後に
以上の3つが、相続土地国庫帰属制度を使わずに「いらない不動産」を放棄する方法です。ご参考になりましたら幸いです。
どの方法を取るにしても、実行してしまうと取り返しのつかないことになる場合も想定されるのでまずは専門家へきちんと相談したうえでやるかやらないかの判断をすることが重要です。
当事務所では、負動産の放棄について、信頼のできる負動産引取会社と連携して問題解決のお手伝いをさせていただくことも可能です。
いらない不動産を相続してしまった方は是非いちどご相談にいらしてください。