[遺言・後見・家族信託]
成年後見人による横領がなくならない理由とその対策
- 投稿:2025年04月24日

成年後見制度は、判断能力が低下した高齢者や障がい者を支援するために設けられた制度ですが、残念ながらその制度を悪用し、被後見人の財産を横領する事件が後を絶ちません。この記事では、最新のニュースを交えながら、成年後見人による横領問題の実態と、その背景にある構造的課題、そして有効な対策について詳しく解説します。
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最新の事例から見る成年後見人の横領事件
2023年2月、広島弁護士会に所属する女性弁護士が、担当していた3人の被後見人の口座から総額1億3,000万円以上を横領したとして起訴されました。この弁護士は、車の購入やエステ代など、私的な支出にこれらの資金を充てており、検察は懲役5年を求刑しています。本人は反省の意を示し、一部の返済も行っているとのことですが、信頼で成り立つ成年後見制度に対する国民の信頼を大きく損ねた事件といえるでしょう。
また、兵庫県の司法書士事務所では、補助者が2,300万円以上を横領し、監督責任を問われた司法書士が業務停止1ヶ月の懲戒処分を受ける事例も発生しました。補助者に業務を丸投げし、適切な監督を行わなかったことが問題視されました。
横領の原因と制度の構造的問題
成年後見制度の最大の問題点の一つは、被後見人本人が後見人を選べないことです。裁判所が選任する制度であるため、必ずしも本人が信頼できると感じる人物が後見人になるとは限りません。そのため、後見人による横領のリスクが生じるのです。
また、横領の使途としては、ギャンブル、投資、生活費の補填、見栄を張るための浪費などが挙げられます。特に、見栄を張りたい、余裕がないといった心理が横領の動機になりやすい傾向があります。
統計で見る不正の実態
裁判所の統計によると、令和5年には専門職による不正事例が29件、被害総額は約2億7,000万円に上ります。専門職以外(主に親族)による不正も多く、件数や金額はそれ以上に上っています。制度自体は社会的に必要なものであるにもかかわらず、構造的な問題が原因で信頼を損なう事件が後を絶たないのです。
有効な対策とは?
横領を完全に防ぐことは制度の構造上難しいと言えますが、以下のような制度を活用することでリスクを低減することが可能です。
任意後見制度
本人が判断能力を有するうちに、信頼できる人を後見人に指定しておく制度です。後見開始後も裁判所の監督下に置かれ、透明性の高い財産管理が行われます。
家族信託
裁判所の監督を受けず、家族間で信頼関係のある人に財産の管理を任せる制度です。より柔軟な運用が可能で、後見制度に不安を感じる人にとって有効な選択肢です。
まとめ
成年後見人による横領事件は制度の信頼性を揺るがす深刻な問題です。制度の改善とともに、本人や家族が自ら対策を講じることが求められています。任意後見制度や家族信託といった選択肢を検討することが、将来的なトラブルの防止につながるでしょう。
成年後見制度や家族信託についてもっと知りたい方は、ぜひ当事務所にご相談ください。