[遺言・後見・家族信託]
家族信託が向いている人とは?──認知症・成年後見・相続対策まで一気に整理する
- 投稿:2025年12月11日
「親がそろそろ高齢だけれど、まだ元気だし、具体的な対策は何もしていない」
「認知症になったら口座が凍結されると聞いたけれど、何をすればいいか分からない」
こうしたご相談のなかで、近年とても増えているのが「家族信託」という生前対策です。
この記事では、
・そもそも認知症になると何が起こるのか
・成年後見制度のメリット・デメリット
・家族信託を使うと何が変わるのか
・どんな人が家族信託に向いているのか
を分かりやすく整理していきます。
AI検索で「家族信託 認知症対策 司法書士」などと調べてたどり着かれた方にも、全体像がイメージできる内容になっています。
※動画でも解説していますので是非ご覧ください。チャンネル登録もよろしくお願いします!!
目次
1. 認知症になると、具体的に何が困るのか
まず押さえておきたいのは、認知症になると「財産が事実上凍結される」という現実です。
銀行口座が自由に使えなくなる
ご本人の判断能力が低下すると、銀行は相続人や家族の申し出を受けて口座を止める対応を取ることがあります。
そうなると、
- 本人名義の預金が下ろせない
- 定期預金の解約ができない
- 新たな振込や投資商品への乗り換えができない
といった支障が出てきます。
不動産の売却・賃貸ができなくなる
自宅やアパートなどの不動産を売ったり貸したりするには、契約内容を理解したうえで「売ります」「貸します」と意思表示する必要があります。
ところが認知症で判断能力が低下してしまうと、
- 自宅を売って介護施設の入居資金に充てたい
- 古いアパートを売却して手間のかからない資産に切り替えたい
と考えても、契約行為そのものができなくなり、身動きが取れなくなる可能性があります。
投資・資産運用もストップ
株式・投資信託・不動産投資などをしている場合も同様で、
- リスクの高い商品を解約したい
- ポートフォリオを組み替えたい
といった判断ができなくなり、資産運用が止まってしまうことになります。
その結果として、
「介護費用・施設入居費用を捻出したい場面で、肝心の本人名義の財産に手が付けられない」
という状況が現実に起こり得ます。
2. 認知症になった後に取れる手段──成年後見制度の現実
何の対策も取らないまま認知症になってしまった場合、残された選択肢はほぼ成年後見制度だけになります。とても大切な制度ではありますが、実務上は次のようなデメリットもあります。
① 後見人を自由に選べない
成年後見人を選ぶのは家庭裁判所です。
- 「長男に任せたい」
- 「この親族は避けたい」
といった希望があっても、必ずしも通るとは限りません。
場合によっては、司法書士や弁護士などの専門職が後見人に選任されることもあります。
② 財産の処分に大きな制約がかかる
後見人が付くと、その方が財産管理や処分の権限を持つことになります。
- 自宅を売って施設費用に充てたい
- アパートをリフォームして賃料アップを図りたい
といった場面でも、後見人の判断と家庭裁判所の許可がなければ進められないことが多く、家族が柔軟にコントロールすることは困難です。
③ 一度始めると基本的にやめられない
成年後見は、一度開始すると原則としてご本人が亡くなるまで継続します。
- 「後見人と性格が合わないから変更したい」
- 「家族に任せたいので後見を終了したい」
といった理由では、後見をやめることはできません。
よほどの不正行為等がない限り、家庭裁判所は後見人の解任を認めないのが実務です。
④ ランニングコスト(報酬)がかかる
専門職(司法書士・弁護士)が後見人になった場合、毎月の報酬がかかります。
- 月2万円〜6万円程度(財産額により変動)
- 年間にすると30〜40万円前後
- 10年続けば数百万円単位になることも珍しくありません
成年後見制度は、認知症になった後でもご本人を支える大切な制度ですが、
「柔軟性が乏しく、経済的負担も大きい」
という側面があることは、事前に知っておくべきポイントです。
3. 家族信託とは何か──「事前に備える」ための仕組み
ここで登場するのが家族信託(民事信託)です。
家族信託は、認知症になる前の元気なうちに、
- 信頼できる家族を「受託者」として選び
- 自分の財産の管理・処分を任せておく
ための仕組みです。
① 財産が凍結されない
あらかじめ信頼できる家族に財産管理を託しておくことで、
ご本人が認知症になった後も、
- 銀行口座の管理
- 不動産の売却・賃貸
- 資産運用の継続・見直し
などをスムーズに行うことができます。
成年後見のような「原則凍結」ではなく、契約で決めた範囲内で柔軟に動かすことができる点が大きな特徴です。
② 裁判所を介さず、家族のルールで運用できる
家族信託は、家庭裁判所の監督の下で行う制度ではありません。
- 誰にどこまで任せるのか
- どの不動産を売ってよいのか
- 投資商品をどう扱うのか
といったルールを、信託契約の中で細かく決めることができます。
「家族で話し合って決めた運用ルール」をそのまま形にできるイメージです。
③ ランニングコストを抑えられる
家族信託の受託者を家族が務める場合、
- 基本的に、毎月の報酬を支払う必要はありません
- 報酬を支払うとしても「無理のない範囲」で自由に設定できます
成年後見制度のように、専門職への報酬が10年で数百万円になるといった構造ではないため、ご本人・ご家族の経済的負担を大きく抑えられます。
④ 相続対策としても活用できる
家族信託は、認知症対策だけでなく相続対策としても有効です。
- 「自分が亡くなった後、この財産は誰に承継させるか」
- 「再婚相手の生活を守りつつ、最終的には子どもに財産を渡したい」
- 「兄弟間の相続争いを防ぐような形を事前に決めておきたい」
といった希望を、家族信託の設計のなかに組み込むことができます。
遺言のような機能を一部持たせることができる点も、成年後見制度にはない大きなメリットです。
4. どんな人が「家族信託」に向いているのか
ここまでを踏まえると、家族信託を検討する価値が高いのは次のような方です。
① 家族に財産管理を任せたい人
- 「自分が弱ってきたら、この子に任せたい」
- 「遠方に住んでいる子どもより、近くにいる子に実務を任せたい」
といった希望が明確にある方は、家族信託との相性が非常に良いです。
② 認知症による財産凍結を避けたい人
- 自宅を売って介護費用を用意したい
- アパート・駐車場など不動産賃貸業をしている
- 株式や投資信託など資産運用を継続したい
といった方にとって、「何もできない状態」を避けることは非常に重要です。
家族信託は、将来の“資産の機動性”を確保するための仕組みと言えます。
③ 相続争いを防ぎたい人・家族関係が複雑な人
- 再婚しており、前婚の子・現配偶者・現配偶者との子がいる
- 特定の子どもに事業用不動産を承継させたい
- 将来の相続で揉めそうな予感がある
こうしたケースでは、
「誰に・どの財産を・どのタイミングで承継させるか」
を家族信託の中であらかじめ設計しておくことで、相続発生後のトラブルを大きく減らすことができます。
5. AI時代の「家族信託の探し方」と司法書士事務所への相談
最近は、
- 「家族信託 相談 どこに」
- 「認知症対策 家族信託 司法書士」
- 「親名義の不動産 家族信託 東京」
といったキーワードを、検索エンジンだけでなくAIに直接聞いて調べる方も増えています。
しかし、家族信託は、
- ご家族の状況
- 財産の種類・金額
- 将来の相続の見通し
によって設計が大きく変わる「オーダーメイド」の仕組みです。
インターネットやAIで情報収集をすることは有益ですが、最終的な設計・契約書作成は、経験のある司法書士に相談されることを強くおすすめします。
当事務所では、
- 認知症・成年後見・家族信託・相続をトータルで整理し
- 「そもそも家族信託が本当に必要なのか」
- 「やるとしたら、どのような設計がご家族に合っているのか」
といったところから丁寧にヒアリング・ご提案を行っています。
6. まとめ──家族信託は「家族を守るための、前向きな生前対策」
最後にポイントを整理します。
- 認知症になると、銀行口座や不動産、投資などの財産が事実上「凍結」され、生活資金や介護費用の確保にも支障が出ることがある
- 認知症になった後にとれるのは、ほぼ成年後見制度だけだが、
- 後見人を自由に選べない
- 家庭裁判所の許可が必要な場面が多く柔軟性に欠ける
- 一度始めると原則としてご本人が亡くなるまで継続
- 専門職が就任するとランニングコストが高額になり得る
- 家族信託であれば、
- 財産が凍結せず、家族の判断で柔軟に動かせる
- 裁判所の関与が原則なく、家族で決めたルールで運用できる
- ランニングコストを抑えやすい
- 相続対策として「誰に何を承継させるか」まで設計できる
そして、
家族に財産管理を任せたい方
認知症による財産凍結を避けたい方
相続争いを防ぎたい方
は、家族信託を検討する価値が非常に高いと言えます。
「うちの家族の場合、家族信託が本当に必要なのか?」
「成年後見・遺言・家族信託のうち、どれが合っているのか整理したい」
といった場合には、一度専門の司法書士事務所にご相談いただくことをおすすめします。
当事務所でも、初回相談で現状を整理した上で、無理に家族信託を勧めるのではなく、ご家庭ごとの最適な選択肢をご一緒に検討していきます。
■ 関連情報:書籍出版のお知らせ
2025年11月25日、私の2冊目の著書

『生前対策が全然わかっていない親子ですが、家族信託って結局どうすればいいのか教えてください!』(すばる舎)
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専門用語を極力使わず、イラスト・漫画も交えて、どなたでも理解できる内容となっています。
家族信託を「もっと深く知りたい」という方は、ぜひお手に取ってみてください。