[相続]
遺産を「平等」に分けたいとき――代償分割と換価分割、どちらを選ぶべきか?(税金の落とし穴も解説)
- 投稿:2025年12月23日
相続の相談でとても多いのが、「兄弟で揉めたくないので、遺産はきっちり平等に分けたい」というご要望です。
ところが、遺産の中心が不動産だと、現金のように単純に半分ずつ分けられません。そこで登場するのが、遺産分割の代表的な方法である代償分割と換価分割です。
どちらも“平等”を目指す手段ですが、実は選び方を誤ると、税金の負担が一方に偏って手取りが不公平になることがあります。今回は事例をもとに、両者の違いと注意点を整理します。
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目次
事例:遺産は「自宅不動産+現金1,000万円」
被相続人はお父さんAさん。相続人は長男Bさん、次男Cさんの2人です。
遺産は次のとおり。
- 自宅不動産
- 現金 1,000万円
兄弟の希望は「とにかく平等に2,000万円ずつ取りたい」。
まず、平等に分けるためには不動産の価値を把握する必要があります。相続税評価(路線価など)ではなく、遺産分割の実務では「市場でいくらで売れそうか」という実勢価格(売却想定額)を基準にすることが一般的です。今回は不動産会社に査定してもらい、3,000万円という評価が出ました。
すると遺産総額は、
- 不動産3,000万円+現金1,000万円=合計4,000万円
よって、兄弟それぞれの目標は2,000万円ずつとなります。
方法①:代償分割(不動産を一人が取り、代償金で調整)
代償分割とは、相続人の一人が不動産など分けにくい財産を取得し、代わりに他の相続人へ代償金を支払って調整する方法です。
この事例では、
- Bさんが不動産(3,000万円)を取得
- Cさんが現金1,000万円を取得
- そのままだと差が2,000万円あるので、BさんがCさんへ1,000万円を支払う
これで帳尻上は、
- Bさん:不動産3,000万円-代償金1,000万円=2,000万円
- Cさん:現金1,000万円+代償金1,000万円=2,000万円
となり、見た目は「完全に平等」です。
しかし、ここに落とし穴があります。
代償分割の落とし穴:売却すると「譲渡所得税」がBさんだけにかかる
Bさんがその後、不動産を3,000万円で売却したとします。
このとき問題になるのが譲渡所得税(不動産を売って利益が出た場合の税金)です。
相続で取得した不動産の「取得費(いくらで買ったか)」は、原則として被相続人(Aさん)が当時購入した価格を引き継ぎます。ところが相続では、昔の売買契約書等が見当たらず、取得費が不明になることが珍しくありません。
取得費が不明な場合、税務上は売却額の5%を取得費とみなす取扱いがあります。
今回、売却額3,000万円だと取得費は
- 3,000万円×5%=150万円
となり、譲渡益(利益)は
- 3,000万円-150万円=2,850万円
という大きな金額になってしまいます。
相続で取得した不動産は、被相続人の保有期間を引き継げるため、通常は長期譲渡(概ね約20%)に該当することが多いです。仮に約20%で計算すると、
- 2,850万円×20%=約570万円
の税負担が発生し得ます(実際は仲介手数料や諸経費、特例控除などで変動します)。
ここが最大のポイントです。
譲渡所得税は、不動産を売却したBさんにだけ課税されるため、手取りがこうなります。
- Bさん:売却代金3,000万円-代償金1,000万円-税金(例:570万円)=約1,430万円
- Cさん:現金1,000万円+代償金1,000万円=2,000万円
「平等にしたつもりなのに、結果として大きな不公平が出る」――代償分割では、このリスクを必ず検討する必要があります。
方法②:換価分割(売って現金化し、分配する)
換価分割とは、相続人全員で不動産を売却して現金化(換価)し、その売却代金を分ける方法です。
この方法のメリットは明確で、
- 売却代金を分けるので、結果が平等になりやすい
- 譲渡所得税が発生しても、原則として各相続人に按分され、税負担も偏りにくい
「売却する前提で平等に分けたい」という場面では、換価分割が合理的な選択になりやすいのです。
それぞれのメリット・デメリット整理
代償分割のメリット
- 不動産を売らなくてもよい(住み続けたい、残したい場合に向く)
- 代償金を受け取る側は、売却活動に関与せずに済み手間が少ない
代償分割のデメリット
- 売却すると譲渡所得税の負担が一人に偏ることがある
- 分割時の評価額と、実際の売却額がズレて損得が偏る可能性がある(市況で上下する)
換価分割のメリット
- 売却して分けるため、最終的に平等になりやすい
- 税負担も按分されやすく、不公平が生まれにくい
換価分割のデメリット
- 原則として売却が前提(思い入れのある不動産を残せない)
- 手続の途中で共有状態が生じることがあり、売却が長引くとリスクになる場合がある
(ただし、遺産分割協議書の設計次第で共有を回避できるケースもあります)
結論:売却前提なら「換価分割」が基本的に有利
今回のテーマである「遺産を平等に分けるならどちらがよいか?」への結論は、
- 最初から売却するつもりなら、換価分割が適している
という整理になります。
代償分割は非常に使い勝手の良い方法ですが、売却が絡むと税金の偏りが発生しやすいため、「平等」を最優先する場合は、換価分割を軸に検討した方が安全です。
まとめ:遺産分割は「税金まで含めて」設計する
遺産分割は、協議書の書き方ひとつで結果が大きく変わります。
特に不動産が絡むと、価格の決め方、売却の前提、譲渡所得税、特例の適用可否など、検討すべき論点が増えます。
「兄弟で平等に分けたはずなのに、手取りが全然違う」
このような事態を防ぐためにも、遺産分割は税務面も含めて全体設計することが重要です。
当事務所では、不動産を含む相続について、遺産分割の進め方から協議書作成、登記まで一括でサポートしています。状況に応じて税理士等の専門家とも連携し、最適な分割方法をご提案します。お気軽にご相談ください。