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[不動産(売買)]

司法書士が教えるハイリスク不動産取引の条件と回避方法

  • 投稿:2024年08月15日
司法書士が教えるハイリスク不動産取引の条件と回避方法

こんにちは、司法書士の佐伯です。今回は「ハイリスク不動産取引条件とその回避方法」について解説します。
このテーマにした理由は、Netflixで話題のドラマ「地面師たち」にインスパイアされたからです。このドラマは、実際にあった巨大不動産詐欺事件をモデルにしたもので、司法書士や不動産業者にとって非常に興味深い内容となっています。
これから不動産の購入を予定されている方、不動産業者の方そして同業者の方にも役立つ内容になっていますので是非最後まで読んでみて下さい。

※動画でも解説していますので是非ご覧ください。チャンネル登録もよろしくお願いします!!

地面師とは?

皆さんは、Netflixで話題のドラマ『地面師たち』をご覧になりましたか?私は個人的に好きな俳優さんも多数出ていることと仕事柄不動産取引に関わる者として、非常に興味深く観ることができました。

期待通り非常に面白いドラマで、実際にあった巨大不動産詐欺事件をモデルに描かれた全7話のドラマでしたが、休日に一気に観てしまいました。まだ、観ていない方は是非一度ご覧になってみてください。

さて、ドラマの題材にもなっている『地面師』ですが、まずは地面師とは何なのかを説明します。

簡単に説明すると、他人の不動産の所有者になりすまし、その不動産を売却して多額の代金を騙し取る詐欺を行う人物や集団を指します。

司法書士は常々、不動産取引の立会を行っていますのでこういった地面師事件の情報については司法書士会を通して回ってきます。当事務所のある町田市でも地面師事件が発生したこともあります。

地面師による詐欺事件ですが、実はある一定の条件を満たした場合に発生する可能性が高く、今回は、その一定の条件について解説していきたいと思います。

ハイリスクの不動産取引条件

それでは、地面師による詐欺事件が発生しやすいハイリスクな不動産取引の条件を9つご紹介します。

1.土地が更地・建物が空家である

建物が建っておらず誰も住んでいない土地や空家は、売主になりすますことが容易です。

逆に、土地の上に建物があり、そこに売主が居住していればその売主に成りすますことは難しいのです。ですので、更地や空家は地面師に狙われやすいということになります。

2.高額な物件(数億円規模)

例えば数百万円の不動産と数億円の不動産があった場合、詐欺行為を行うにあたって労力がほぼ同じ場合、皆さんが地面師ならどちらの不動産を狙うでしょうか。当然、後者の数億円の不動産を狙いますよね。

よって、詐欺師はリスクを冒すならば、高額な物件を狙います。

3.抵当権等がなく登記簿の乙区がキレイ

不動産を売却する場合、買主への名義変更(所有権移転登記)の前提として、抵当権が付いていればそれを抹消する必要があります。

抵当権を抹消するためには、抵当権者たる金融機関と決済までの事前の打ち合わせや、金融機関の指定口座への残債務の振込が必要です。つまり、地面師側で売買代金の支払い方法を指定することができなくなるのです。

抵当権がないと、詐欺師が売却の際に不法入手した口座等に振り込ませやすくなります。

よって、地面師にとっては抵当権等の担保が付いている不動産は狙いにくく、逆に登記簿の乙区に抵当権等の担保権が付いていない不動産は狙いやすいということになります。

ちなみに、登記簿は最寄りの法務局で取得することが可能ですので、目当ての不動産に抵当権が付いているかどうかを確認することは誰でも簡単にできます。

4.売主が売り急いでいる

不動産売買の取引が長引けば長引くほど、なりすましを見抜かれる可能性が高くなるため、地面師は可能な限り早く進めたいと考えます。場合によっては、急ぎなので価格も少し安くするという謳い文句もでてくるかもしれません。

5.売主に謎のコンサルタントがついている

売主になりすましている人物は地面師グループの中ではその時だけのスポット要員です。地面師は一人ではなくチームで詐欺を行います。スポット要員はその時だけチームに加わる素人なので、ボロが出ないようにその監視役や指示役が必ず近くにいます。

よって、売主に何らかのコンサルタントがついている場合、成りすましをサポートしている可能性があります

6.なかなか売主に会わせてもらえない

何度も会うことで成りすましがばれるリスクがあるため、売主に会わせないようにします。

前述のとおり売主に成りすましている人物は素人なので、売主の個人情報等は記憶していてもちょっとした世間話からボロがでる可能性があるため、地面師の立場としてはなるべく会わせたくないのです。

7.本人確認書類や権利証の事前確認を嫌がる

地面師が用意する売主の本人確認書類(運転免許証等)や権利証はもちろん偽造されたものです。

偽造を見破られるリスクを避けるためにも、こういった書類は取引の最終段階までなるべく確認させたくないため、事前確認を嫌がります。

8.権利証を紛失している

要件7のように権利証を偽造するパターンもありますが、紛失したと主張するパターンもあります。実は不動産売買の際に権利証を紛失していても司法書士が権利証に代わる本人確認情報という書類を作成すれば代替できるのです。

偽造する行為には見破られるリスクが伴うため、そもそも紛失したことにした方が、偽装する手間やリスクもなくて好都合ということもあります。

9.登記済証時代(平成17年より前)に取得した不動産

    権利証のフォーマットは不動産登記法の改正に伴い平成17年を境に段階的に変更されています。平成17年以前のもの(和紙に登記済という朱色の印鑑が押されたもの)を登記済証といい、現行のものは登記識別情報通知といいます。

    登記識別情報通知にはアルファベットと数次からなる12桁のパスワードが記載されており、そのパスワードが一致しないと登記申請が通りません。パスワードは見えないように封印されているため、真正な所有者でない限りその内容を知ることは容易ではありません。また、パスワードを偽造することもほぼ不可能です。

    現行の登記識別情報通知の不動産でも、要件8のように権利証自体を紛失したと主張するパターンであれば成りすませないわけでもありませんが、平成17年以前はその紙自体が権利証の役割を果たしていたので、現行のものに比べて偽造しやすいのです。よって、登記済証時代の不動産のほうがどちらかというと狙われやすいと言えます。

    リスク回避方法

    では、これらのリスクをどう回避すればよいのでしょうか?
    答えはシンプルです。司法書士に依頼することです。

    司法書士は不動産取引に精通しており、豊富な知識と経験を持っています。さらに、多くの司法書士事務所は賠償保険に加入しています。

    もし、司法書士の過失によって、売主のなりすましを見抜けず、買主が不動産の権利を取得できなかった場合には、司法書士が加入している賠償保険でその損害を補填することが可能です。文字通り司法書士に依頼する事は保険替わりになるのです。

    不動産売買の司法書士報酬は10万円以上することがほとんどかと思いますが、数千万から数億円の取引をするにあたっての必要経費になると考えていただいた方が良いかと思います。

    以上、今回はハイリスク不動産取引の条件と回避方法について解説しました。

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