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【司法書士が解説】相続放棄のやり方と注意点

  • 投稿:2024年08月28日
【司法書士が解説】相続放棄のやり方と注意点

人が亡くなった時、必然的に発生するのが「相続」。しかし、この相続は必ずしもメリットがあるわけではなく、場合によってはデメリットの方が大きいこともあります。

このようなケースで役立つのは相続しないことにできる相続放棄。状況によっては非常に有効な選択肢です。

そこで今回は相続放棄についてその効果や申請の仕方・費用、手続きの際の注意点などについてポイントを抑えながら解説していきます。特に、正式な手続きを踏んでいない「なんちゃって相続放棄」の落とし穴についても解説しているので、ぜひご一読ください。

※動画でも解説していますので是非ご覧ください。チャンネル登録もよろしくお願いします!!

相続放棄とは?

相続放棄とは被相続人(亡くなった人のこと)の死亡に伴い発生する相続の一切の権利・義務を放棄する手続きのことです。

難しい言い方をしてしまいましたが、要するに遺産も負債も何にも相続しない状態にする手続きということになります。

相続放棄の効果

相続放棄が認められると、その相続は最初からなかったものと扱われます。相続によって遺産(プラスの相続)を得ることができない代わりに、借金などの債務を相続人として引き継がなければならない義務(マイナスの相続)から逃れることができます。

相続放棄の期限

相続放棄が認められるのは被相続人の死亡を知ってから3か月です。その期間を過ぎると原則として相続放棄の手続きはできなくなります。

被相続人が死亡してからではなく、その死亡を知ってから3か月という点にご注意ください。

疎遠になっていた親兄弟が死亡して相続人となった場合に、死亡したことを後日知った場合はその日が相続放棄の期限のスタートとなります。

相続放棄のやり方と費用

相続放棄のやり方や書類、費用などについて説明します。手続き単体で見ると比較的簡単で費用もあまりかかりません。

相続放棄のやり方

相続放棄の手続きは、被相続人が死亡時の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

まず相続放棄申述書という相続放棄を行いたい旨を記した書類が必要です。こちらは家庭裁判所のフォーマットがあるので以下のリンクを参照してみてください。

申述書の書式https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_souzokuhouki_m.pdf

申述書記載例https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_souzokuhouki_rei20h.pdf

添付書類は、被相続人が亡くなったことや被相続人と相続人の関係性を証明する戸籍謄本、戸籍の附票などの添付書類(何が必要になるかは被相続人と申請人の関係性などにより異なります)を家庭裁判所に提出します。

裁判所が書類を受け取った後、相続放棄を申述した人に対して「本当に相続放棄していいか」再度の意思確認(原則として郵送による書面照会)が行われます。

一定期限内に上記の裁判所からの照会書に回答して返信してください。最終的に「相続放棄申述受理通知書」が郵送されてきたら相続放棄の手続きが正式に完了します。

相続放棄の費用

相続放棄の申述書を作成する際、800円の収入印紙が必要です。

その他、裁判所と書類のやり取りを行うための切手代は申請者負担で、切手現物、もしくは切手代をあらかじめ裁判所に納めます(切手代は裁判所により異なりますので事前に管轄裁判所へ問い合わせましょう)。

また、申請の際の戸籍等の各種書類を発行するのに各数百円程度の手数料がかかります。

もし、相続放棄の手続きを司法書士に依頼する場合は別途報酬が発生します。以下、当事務所の相続放棄の費用等が記載されたページのリンクです。

さえき事務所の相続放棄手続きご案内

相続放棄の注意点

最後に相続放棄に関する注意点を説明します。申述書を作成したり手続自体はそれほど難しいものではないのですが、相続放棄がそもそもできるのか、相続放棄手続き中にやってはいけないことなど、相続放棄は手続き以外に注意しなければならないことが非常に多いのです。

一部でも財産を処分したら相続放棄はできない

被相続人の預金を買い物や被相続人の債務の返済に使ったり、物品を売却するなど財産の一部でも手をつけた(処分した)場合は相続を承認したと見なされ(法定単純承認と言います)、被相続人の死亡を知ってから3か月以内であっても相続の放棄はできなくなります。

「欲しい財産だけ先に処分した後に、残りは放棄する」といった都合の良いことは認めれらません。

遺産分割協議を行ったり、被相続人の過払いの税金・保険料などの還付を受けた場合でも法定単純承認とみなされることがあるので注意が必要です。

「なんちゃって相続放棄」では債務は放棄不可

相続放棄を成立させるには、家庭裁判所に対して手続きを行う必要があります。

財産の相続(プラスの相続)を受けないだけであれば、相続人の間の話し合い(遺産分割協議)だけで「相続人の一人であるAさんは遺産相続しない」「Bさんだけが遺産相続する」といった取り決めが可能です。

こういった、遺産分割協議をして遺産相続しなかったことを「相続放棄」と思っている方も少なくありません(私は便宜上「なんちゃって相続放棄」と呼んでいます)。

プラスの財産しかないような相続であれば特に問題になることもないのですが、債務(マイナスの相続)に関しては家庭裁判所に申述する本当の相続放棄をしなければ債務の相続を免れることはできません。

なぜなら、債務に関しては誰が相続するかは相続人間同士の話し合いだけでは認められず、債権者側の承認を得なければなりません。相続人だけの話し合いで支払い能力のない相続人やどこにいるのか連絡もつかないような相続人が債務を相続することが認められると、債権者がその債権を回収する難易度が上がるため、債権者保護の観点から好ましくないことが理由です。

そのため債務の相続については相続人どうしの取り決めが債権者に対して有効とはならず、自分では相続放棄をしたつもりでも、なんちゃって相続放棄だった場合は後で債権者から借金の請求がされる可能性もあるわけです。

相続放棄は裁判により取り消される可能性がある

正式な相続放棄が認められれば原則としては被相続人の債務を求められることはありません。

しかし、例えば実は預貯金を勝手に使っていたなどの事実を隠して相続放棄の申述をしていて、後からこの事実が判明した場合など、債権者から相続放棄無効の訴えを起こされてしまう場合があります。訴えが認められると相続放棄は無効となり、相続が行われたものとして扱われます。

裁判所に申し立てが受理された時点で相続放棄が確定し、あとになって絶対に相続放棄がひっくり返らないというわけではありません。

まとめ

相続放棄に関して、その効果や手続き、注意点などのポイントを押さえました。

相続放棄は相続に関わる一切の権利義務を放棄できる強力な効果のある手続きであり、被相続人の莫大な借金を抱えていた場合などは相続人の救済のためにも必要な手続きです。相続放棄ができる期限や自動的に相続を認める事になる行為(法定単純承認)になどに注意しながら、メリットが大きいようであれば手続きを検討してみてください。

被相続人に借金がなく、単に遺産を相続しないだけであれば遺産分割協議をすれば良いのであえて相続放棄の手続きを行う必要はありませんが、万が一借金があった場合など心配であれば、法的な手続きとして相続放棄を行うことがおすすめです。

相続放棄の手続き自体はそれほど難しいものではありませんが、失敗するとやり直しのできない手続きです。

相続放棄をするべきなのか、相続放棄ができるのか、相続放棄をしたらその後どうなるか等、手続き外の部分で問題が沢山あるので、できれば専門家である司法書士等にご相談いただくことが良いかと思います。

当事務所は相続放棄についても多数の実績がありますので、相続放棄を検討している方は是非一度相談にいらしてください。

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