[相続]
相続のプロが教える不動産の遺産分割テクニック①換価分割について
- 投稿:2024年08月29日
- 更新:2024年09月19日
不動産の遺産分割に関するよくあるお悩みについて、相続のプロであるさえき事務所の知見から解決策をご提案します。
今回解説するのは「相続不動産を、なるべく手間をかけずに現金化して分配してしまいたい」というケースです。
一般的に考えられる手法と比べて今回解説する方法を使うことで手続きを大幅に省略できます。その仕組みや注意点、不動産売買に詳しい方が懸念されるかもしれない点についても解説していきますので、ぜひご一読ください。
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目次
不動産を相続人で平等に分けたい
地方にある実家の建物と土地に3000万円の価値があったとします。
資産価値は高いのですが、3人の相続人(子供)はもうそれぞれ都会で家庭を持って自分の家も持っているので、いまさら実家に戻るつもりもないといった場合、空家状態になる実家を相続しても毎年固定資産税が発生するだけになってしまいます。
また、誰かに貸すにも管理が面倒だし、空家状態で放置すると家も傷む一方で資産価値が減少し、防災や防犯の面でも近隣の方に迷惑を掛けてしまうかもしれません。
そうなると、お金に換えて分配してしまった方が遺産を平等に分けることができますし後腐れもありません。
このようなケースでなるべく手間をかけずに手続きを完了する方法を解説していきます。
なるべく手間なく売却を進める方法
このようなケースにおいて、最も手間をかけない方法は相続人の誰かを「代表相続人」として単独名義で相続し、代表相続人が不動産を売却した上で各相続人に対して分配を行う方法です。
共有名義にすると、手続きが煩雑になる
プロに相談せずやってしまいがちなのが、相続人全員の共有名義として相続すること。実は手続きが非常に煩雑になってしまいます。
なぜなら、不動産が共有名義であった場合は売買契約や決済(残金の支払いと不動産に引き渡し)、登記手続きなど、現金化するまでに要する諸手続きを原則として相続人全員で足並みを揃えて行わなければなりません。相続人それぞれが遠方に住んでいたり、仕事の都合で予定を調整しづらいなどの事情があると、手続きの負担はさらに増えてしまいます。
相続人のうちの一人が他の相続人の代理人となって、代表者が手続きを進めることも可能ですが、売主が相続人全員であることには変わりがありませんので、何をするにせよ相続人全員の協力が必要です。
代表相続人を設定して「換価分割」を行うと一人で手続きが可能
代表相続人を決定し不動産を代表相続人一人の名義に相続登記した場合、不動産の売買や決済といった諸手続きは全て代表相続人が単独で行うことが可能です。わざわざ相続人全員で予定を調整したり、委任状のやり取りをしたりといった手間は全て省略できます。
売買契約や決済が完了して不動産を現金化した後に、遺産分割協議で取り決めた通りに各相続人に分配します。
このような方法を「換価分割」と呼びます。
注意!遺産分割協議書に明記しないと贈与税がかかります
注意しなければならないのは、代表相続人一人おいた換価分割を行う場合、遺産分割協議書にきちんとその旨を明記しなければなりません。
具体的には、「不動産を『売却換価』して分けるため、便宜上○○を代表相続人とする。売却換価後の金銭は相続人Aが○分の○、相続人Bが○分の○取得する。」といった内容の文言を記載します。
換価分割する旨の記載をしなかった場合、代表相続人が不動産を現金化した後、他の相続人に送金した場合、その送金が「贈与」とみなされてしまう可能性があります。
贈与とされた場合、受け取った側に贈与税が課税されてしまいます。贈与税は非常に税率が高いので換価分割するのであれば贈与税が課税されないようにきちんと遺産分割協議書の中に明記しておくことが非常に重要です。
譲渡所得税は遺産の取得実態で判断される
譲渡所得税とは、不動産を売却した際に取得時価格より売却時価格の方が高かった場合、その差額に対して課税される税金のことです。不動産の所有期間によって税率は異なりますが、相続の場合は被相続人の所有期間を引き継ぐことができるため一般的には長期譲渡(税率約20%)になることが多いでしょう。
この譲渡所得税ですが、代表相続人が単独名義で相続登記をした後に換価分割を行った場合、誰が譲渡所得税を納税しなければならないのか疑問に思われる方も多いと思います。
売買契約書や登記簿謄本上に現れる売主は代表相続人一人になりますが、もし、譲渡所得税を代表相続人一人だけ負担することになるとあまりに合理ですよね。
実際は、譲渡所得税が発生する場合には、換価分割を行った場合でも相続人の共有名義にしてから売却した場合でも、両社同様に相続人全員に対して課税されます。
譲渡所得税の課税は、誰の名義で売却したかではなく遺産相続の取得実態から判断されるため、手続きの進め方によって課税のされ方が変わるということはありません。
まとめ
・不動産を現金化して分配する場合、代表相続人を設定して換価分割を行うと手続きをスムーズに行うことができる
・譲渡所得税は代表相続人だけが課税されると言ったことはなく、遺産の取得実体に応じて課税される
・換価分割をする場合は遺産分割協議書にその旨を明記することも忘れないよう注意
換価分割を行う場合、ちょっとしたミスで税金が高くなったり手続きができなくなることもあります。
当事務所は換価分割や相続不動産の売却代理の実績も多数ありますので是非一度ご相談ください。