[相続]
相続放棄と固定資産税の支払い義務について
- 投稿:2024年09月05日
- 更新:2024年09月19日
相続放棄をすると被相続人からの一切の遺産と負債(借金など)を相続することはなくなります。
未納の税金も基本的には例外はなく、相続放棄をすれば相続人は支払い義務を免れることができるのですが実は固定資産税には例外があります。
今回は相続放棄と固定資産税の支払い義務について相続専門の司法書士が解説します。
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相続放棄の効力は絶対的
民法939条
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
条文のとおり、相続放棄をすることによって、その人は初めから相続人ではなかったことになるので、遺産をもらうことも無いし、借金を引き継ぐこともないわけです。そもそも「相続人ではない」わけです。
固定資産税の納税義務者
不動産を所有していると固定資産税という税金を納めなければなりません。毎年4-5月くらいになると都税事務所や市区町村役場から納税通知書という紙が送られてきますよね。
役所は、1月1日に登記簿上の所有者に対して、その年1年分の固定資産税の納付を求めます。登記簿を管理している法務局と固定資産税の納税義務者を管理している市区町村役場は情報共有しているので、1月1日時点で登記簿上の所有者となっている人物を把握することができます。よって、1月1日に登記簿上の所有者として登記されている人は、市役所の固定資産税課税台帳に登録されます。固定資産税課税台帳に登録されている人が納税義務者であることを「台帳課税主義」といって、地方税法という法律で定められています。
もし、課税基準であるその年の1月1日より前に登記簿上の所有者が死亡している場合は相続人等が固定資産税の納税義務を負うことになります。では、相続放棄をしたら一切の遺産や負債を相続することにならないのだから、相続放棄をした相続人は固定資産税を支払わなくていいはずです。
ところが、例外があるのです。
相続放棄vs台帳課税主義
分かりやすいように事例で説明します。
事例
被相続人Aは令和6年11月1日に死亡した。相続人はBのみである。Aの遺産は自宅不動産があるが、借金も多額に及ぶため、Bは管轄の家庭裁判所で、令和6年12月15日に相続放棄の申述をした。Bの相続放棄の申述は令和7年1月5日受理決定がなされた。
このような事例で、Bさんは固定資産税の納税義務を負うかという話です。Bさんは相続放棄をしたので原則として払う必要はないと考えれます。
しかし、もし固定資産税課税台帳にBさんが登録されてしまった場合はどうでしょう。相続放棄の申述が受理された(相続放棄が裁判所として認めた)のは令和7年1月5日です。つまり令和7年1月1日時点ではBさんの相続放棄は確定していないため役所としてはBさんを相続人と認定します。
事例の結論として、Bさんは固定資産税を支払う義務を負うことになります。
相続放棄しているのにおかしなことだと思われますが、これには裁判所の判例があって、相続放棄しても固定資産税課税台帳に登録されている場合は固定資産税を支払わなければならないのです。前述した台帳課税主義というものです。
ただし、支払い損ということではなく、一旦は支払う必要があるのですが、真の所有者がいる場合はその真の所有者に対して求償(立て替えた分を支払ってねということ)することが出来ます。
相続放棄をしたことによって、相続権は次順位の相続人へと承継されますので、次順位の相続人が相続放棄しなければその人に対して、もし相続人全員が相続放棄した場合は相続人不存在の状態になりますので、相続財産法人から支払い済みの固定資産税を返還するように求償することになります。
このように、「年またぎの相続放棄」の場合には固定資産税の納税義務まで完全に放棄することができない場合があるのです。
まとめ
- 相続放棄をすれば固定資産税の納税をする必要は原則としてない
- 例外的に相続放棄をしても固定資産税課税台帳に登録されると納税義務が生じる
- 立て替えた固定資産税は次順位の相続人等に対して返還を求めることが出来る
- 「年またぎの相続放棄」には注意を要する
以上です。今回は相続放棄の例外についてのコラムでした。司法書士法人さえき事務所では相続放棄に関するお悩みも多くご相談いただいております。失敗のできない手続きになりますので相続放棄でお悩みの方はご相談のご連絡をお待ちしております。