[遺言・後見・家族信託]
自筆証書遺言の書き方ガイド
- 投稿:2025年01月24日

遺言書を作成することで、相続発生後の手続きの煩雑さを大幅に軽減できます。しかし、実際に遺言書を作成する人は少ないのが現状です。そこで今回は、司法書士が自筆証書遺言の書き方を分かりやすく解説します。特別な費用をかけずに作成できる自筆証書遺言について、具体的なポイントを押さえながら説明していきます。
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目次
自筆証書遺言の作成に必要なもの
自筆証書遺言を作成するために必要なものは、以下の2つだけです。
- 紙: 形式の指定はありませんが、便箋を使用するとよいでしょう。
- ペン: 消えにくい油性インクのペン(ボールペンなど)を使用しましょう。
作成に特別な費用はかからず、紙とペンさえあれば作成できるのが、自筆証書遺言の大きなメリットです。
遺言書の形式要件
遺言書が法律的に有効となるためには、以下の4つの要件を満たす必要があります。
- 全文を自筆で書くこと
- 財産目録(不動産や預貯金などを記載したページ)はパソコンで作成しても可。
- 日付を記載すること
- 「令和○年○月○日」など、特定できる形で記載する。
- 「令和○年○月吉日」といった曖昧な表現は無効。
- 署名をすること
- 戸籍通りのフルネームで正確に記載する。
- 押印をすること
- 認印でも可だが、できれば実印が望ましい。
これらの要件を満たしていない場合、遺言書は無効になってしまうため注意が必要です。
遺言書の内容のポイント
遺言書の内容を明確にするために、以下の5つのポイントを押さえましょう。
見本を載せるので参考にしながら読み進めてください。


遺言書でできることを把握する
遺言書では、以下のようなことが可能です。
- 相続分の指定(例:「長男に50%、次男に50%」)
- 遺贈(相続人以外の人に財産を譲る)
- 遺産分割の禁止(一定期間、遺産分割を禁止する)
- 認知(婚外子の認知)
- 遺言執行者の指定
相続人を明確に特定する
遺言書では、相続人を明確に特定するために、以下の情報を記載しましょう。
- フルネーム(戸籍に記載のとおり正確に)
- 続柄(例:長男、妻)
- 生年月日
- 住所(任意)
例えば、「長男 山田太郎(昭和60年1月23日生まれ)」と記載することで、特定が明確になります。
財産を明確に特定する
財産を特定できるように、以下のように詳細に記載しましょう。
- 不動産: 登記事項証明書(登記簿謄本)の記載と一致させる。
- 預貯金: 銀行名、支店名、口座種類、口座番号を記載。
例えば、預貯金は「○○銀行○○支店 普通預金 口座番号○○○○○」といった形で記載します。
文末表現を明確にする
相続させる意思を明確にするため、以下の表現を用います。
- 「相続させる」(相続人に対して)
- 「遺贈する」(相続人以外の人に対して)
「託す」や「任せる」といった曖昧な表現は避けましょう。
遺言執行者を指定する
遺言執行者を指定すると、相続手続きがスムーズに進みます。
例:「遺言執行者として司法書士○○を指定する。」
相続人の一人を指定することも可能です。
遺言書の保管方法
作成した遺言書は、紛失しにくく、相続人が発見しやすい場所に保管しましょう。
避けるべき保管場所
- 金融機関の貸金庫: 遺言者死亡後、迅速に手続きを行うために遺言書を作成したにも関わらず、貸金庫の開扉に相続人全員の承諾が必要になることがある(もめている相続人がいると貸金庫を開けられないことも・・・)。
おすすめの保管方法
- 自宅のわかりやすい場所(紛失や偽造変造されるリスクがあるので注意)
- 信頼できる相続人や遺言執行者に預ける
- 法務局の自筆証書遺言保管制度を利用する
法務局の自筆証書遺言保管制度を利用すると、紛失のリスクを避けられる一方で、一定の手続きが必要になります。
まとめ
自筆証書遺言は、紙とペンがあれば作成できる手軽な方法ですが、形式要件を満たさなければ無効になってしまいます。以下のポイントを押さえ、正しく作成しましょう。
- 全文を自筆で書く(財産目録を除く)
- 日付、署名、押印を必ず記載する
- 相続人・財産の特定を明確にする
- 適切な文末表現を用いる(相続させる/遺贈する)
- 保管場所を適切に選ぶ
遺言書を正しく作成し、大切な財産を円滑に相続できるようにしましょう。