[相続]
死亡届けを出したら銀行口座は凍結される?口座凍結前に引き出すリスクについて
- 投稿:2025年01月28日

相続の実務に携わっていると、「役所に死亡届けを出したら銀行口座は凍結されるのか?」や「口座凍結前にお金を引き出すことは可能なのか?」といった質問をよく受けます。本記事では、これらの疑問に対して詳しく解説し、口座凍結前に預貯金を引き出すリスクについてもお伝えします。
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目次
死亡届けを出すと銀行口座は凍結されるのか?
結論から言うと、「死亡届けを出しただけでは銀行口座は凍結されません」。
死亡届けは市町村役場などの行政機関に提出しますが、行政機関と金融機関の情報は連携していません。そのため、死亡届けを提出しただけで銀行が口座を凍結することはないのです。死亡が戸籍に記載されたとしても、それが銀行へ通知されるわけではありません。
ただし、以下の場合には銀行が口座を凍結することがあります。
- 銀行の担当者が死亡の事実を知った場合
- 例えば、新聞の訃報欄や葬儀の情報から名義人の死亡を知った場合、銀行は自主的に口座を凍結することがあります。
- 地元の金融機関担当者が葬儀に参列することもあり、その際に名義人の死亡を把握すると、口座が凍結される可能性があります。
- 遺族や相続人が銀行に連絡した場合
- 相続手続きを開始するために銀行へ死亡の連絡をした場合、口座は速やかに凍結されます。
口座凍結前に預金を引き出すリスク
「口座が凍結される前に預金を引き出しておけば問題ないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、この行為には以下のようなリスクがあります。
相続人間のトラブル発生のリスク
亡くなった方の預金は相続財産(遺産)に該当します。そのため、相続人の1人が無断で預金を引き出してしまうと、他の相続人との間でトラブルに発展する可能性があります。
- 相続財産の不正使用疑惑
- 引き出したお金をどのように使ったのかが不明だと、不正使用を疑われる可能性があります。
- 例えば、自分のために使った場合、他の相続人から遺産分割の不公平を指摘されることがあります。
- 遺産の分配が困難になる
- 口座の預金は相続財産として公平に分ける必要がありますが、一部の相続人が勝手に引き出すと適正な遺産分割ができなくなる可能性があります。
相続放棄や限定承認ができなくなるリスク
亡くなった方の財産を処分する行為は「単純承認」とみなされる場合があります。単純承認を行うと、相続放棄や限定承認ができなくなるリスクがあります。
- 単純承認とは?
- 単純承認とは、相続財産をすべて受け入れることを指します。
- 相続財産を処分した場合、単純承認とみなされ(みなし単純承認)、相続放棄や限定承認ができなくなることがあります。
- 相続放棄や限定承認ができないとどうなる?
- 亡くなった方に多額の借金がある場合、相続人はその借金を引き継ぐことになります。
- 口座からお金を引き出したことで単純承認とみなされると、相続放棄や限定承認ができず、負債を背負うリスクが生じます。
なお、過去の判例では、葬儀費用のための預金引き出しは「みなし単純承認」に該当しないとされたケースもあります。ただし、判例があるということは相続争いが生じたケースなのです。他の相続人に無断で預金を引き出すことはできるだけ避けた方が無難でしょう。
口座凍結前に預金を引き出す場合の適切な方法
どうしても預金を引き出す必要がある場合は、「預貯金の仮払い制度」を利用するのが望ましいです。
預貯金の仮払い制度とは?
2019年7月1日に施行された「預貯金の仮払い制度」は、相続開始後でも一定額の預金を相続人が引き出せる制度です。
- 引き出せる金額の計算方法
- 相続開始時の預金額 × 1/3 × 法定相続分
- ただし、1つの金融機関から引き出せる上限は150万円まで
手続き方法
仮払い制度を利用する場合、金融機関ごとに手続き方法が異なりますが、一般的には以下の書類が必要です。
- 亡くなった方の戸籍謄本(出生から死亡までのもの)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 預金を引き出す相続人の印鑑証明書
これらの書類を用意し、各金融機関に提出することで、正式に預金を引き出すことができます。
まとめ
- 死亡届けを出しただけでは銀行口座は凍結されない。
- ただし、銀行の担当者が死亡を知った場合や、遺族が金融機関に連絡した場合には凍結される。
- 口座凍結前に預金を引き出すとリスクがある。
- 相続人間のトラブルにつながる可能性がある。
- 相続放棄や限定承認ができなくなるリスクがある。
- どうしても預金を引き出したい場合は、「預貯金の仮払い制度」を利用するのが安全。
- 1つの金融機関から150万円まで引き出せる。
- 必要書類を準備し、適切な手続きを踏むことが重要。
相続に関する問題は慎重に対応しないと、思わぬトラブルにつながることがあります。本記事を参考にして、適切な対応を心がけましょう。