[遺言・後見・家族信託]
家族信託で財産管理をするための預貯金口座の作り方と注意点
- 投稿:2025年02月28日

今回は 「家族信託で金銭を管理するための預貯金口座」 について解説します。
家族信託を活用することで、財産の円滑な管理や承継が可能になりますが、その際に 「信託財産としての金銭をどう管理するか」 は非常に重要なポイントです。特に 信託財産と個人財産を明確に分ける「分別管理」 を適切に行わないと、後々トラブルになることがあります。
本記事では、家族信託における 預貯金口座の開設方法、最適な口座の種類、注意点や代替策 について詳しく解説していきます。
※動画でも解説していますので是非ご覧ください。チャンネル登録もよろしくお願いします!!
目次
家族信託における金銭管理の重要性
家族信託では、信託財産として 不動産や預貯金(現金) などを管理できます。特に預貯金については、日々の支払いや資産の運用などに関わるため、適切な管理が求められます。
なぜ分別管理が必要なのか?
家族信託をする場合、受託者(信託財産を管理する人)は、自身の個人財産と信託財産を分けて管理する義務(分別管理義務) があります。これは 「信託法第34条」 に規定されており、受託者の個人財産と信託財産が混ざらないようにすることで、以下のようなリスクを防ぎます。
① 受託者の個人財産との混同による差し押さえリスク
例えば、受託者が 自身の個人口座に信託財産を混ぜて保管していた 場合、その口座が 受託者個人の債権者から差し押さえ にあったとき、信託財産も一緒に差し押さえられてしまう 可能性があります。
たとえ 「これは信託財産だから私個人のものではありません」 と主張しても、債権者に認められないケースが多いため、分別管理が重要になります。
② 受託者の死亡による口座凍結リスク
通常、個人の銀行口座は名義人が死亡すると 凍結されてしまいます。しかし、適切な信託口座を開設しておけば、受託者が死亡しても口座が凍結されずに運用を継続することが可能 になります。
家族信託に最適な預貯金口座の種類とは?
家族信託において金銭を管理する口座を作る場合、最適な口座の形態 を選ぶことが重要です。
(1)倒産隔離機能を持つ「家族信託専用口座」
最も望ましいのは、「倒産隔離機能」を備えた家族信託専用の口座 です。
倒産隔離機能とは?
倒産隔離機能とは、受託者の個人口座とは別の管理システムを持つ口座で、受託者の借金による差し押さえや死亡による口座凍結の影響を受けない 仕組みです。
この口座を開設すると、
- 受託者の個人口座とは異なる「信託専用の口座」として管理できる
- 受託者の借金や差し押さえの影響を受けない
- 受託者の死亡時に口座が凍結されない
といったメリットがあります。
(2)家族信託専用口座のデメリット
ただし、この口座は 開設できる金融機関が限られている というデメリットがあります。
また、
- 信託財産の額が一定以上(1000万円以上など)ないと開設できない
- 司法書士や弁護士などの専門家を介さないと開設できない
- 口座開設に手数料がかかる
などの制約があるため、事前に確認が必要です。
倒産隔離機能付きの信託専用口座が作れない場合の代替策
倒産隔離機能付きの家族信託専用口座が開設できない場合、以下の方法で対応できます。
(1)受託者が新規の金融機関で口座を開設する
受託者が これまで使っていなかった金融機関で新たに口座を開設する ことで、個人口座との混同を避ける方法です。
(2)口座名義を「信託口」にする
口座名義を 「〇〇信託口」 とすることで、信託財産であることを明確にする方法です。
例:
- 委託者A・受託者B信託口
- 受託者B信託口
この方法は、個人事業主の 「屋号付き口座」 に近い形で設定するものですが、銀行のシステム上は 通常の個人口座と同じ扱い になる点に注意が必要です。
(3)信託契約書に口座情報を明記する
信託契約書の中に、信託財産を管理する口座の情報を明記しておく 方法です。
「信託財産として管理する預貯金は、○○銀行○○支店の口座番号○○○○に預ける」
といった形で契約書に記載し、公正証書で作成 しておくと、より信頼性が高まります。
まとめ:最適な口座管理方法とは?
家族信託で金銭を管理する際、最も理想的な口座は 「倒産隔離機能を持った家族信託専用口座」 です。
しかし、開設のハードルが高いため、次善策として、
- 新規の金融機関で口座を開設する
- 口座名義を「信託口」とする
- 信託契約書に口座情報を明記する
といった方法を活用するとよいでしょう。
家族信託を適切に運用するためには、財産管理の仕組みをしっかり整えることが重要 です。
ぜひ信託口座の開設についても、慎重に検討してみてください!