[遺言・後見・家族信託]
認知症でも遺言書は作成できる?判断能力と法的要件を司法書士が徹底解説!
- 投稿:2025年04月16日

今回は「認知症でも遺言書は作成できるのか?」という、非常に多くの方からご質問をいただくテーマについて、司法書士の視点から詳しく解説してまいります。
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目次
遺言書が作成できる条件とは?
まず、遺言書の作成には2つの法的な条件があります。
① 年齢が15歳以上であること
意外に思われるかもしれませんが、遺言書は15歳以上であれば作成可能です。つまり、15歳未満の未成年が書いた遺言書は、たとえ内容が正当であっても無効となってしまいます。
② 判断能力(遺言能力)があること
もう一つの重要な条件が、「遺言能力」の有無です。これは、法律的には「事理弁識能力」とも呼ばれます。
要するに、遺言の内容や意味を理解し、自己の意思で判断できる能力のことを指します。
認知症と遺言書作成の関係
では、本題の「認知症と遺言能力」についてです。
結論から言うと、認知症であっても、遺言書を作成することは可能です。ただし、それにはいくつかの注意点があります。
認知症の進行度により異なる判断
認知症といっても、初期・中期・後期と進行度によって状態は大きく異なります。
- 初期段階であれば、日常会話もスムーズにでき、遺言内容も理解できることが多く、遺言書の作成も十分可能です。
- しかし、後期に進行し、家族の名前も思い出せない状態になると、明らかに遺言能力がないと判断されてしまいます。
判断が難しい「グレーな状態」の対応
実際には、「今日はしっかりしているけれど、明日は何も覚えていない」といった波のある状態の方も多くいらっしゃいます。
このような場合、私たち司法書士も医学の専門家ではないため、正確な判断が難しいです。そこで必要になるのが、医師による診断書の取得です。
医師の診断書が遺言の有効性を守るカギに
認知症の診断を受けている場合、遺言書作成時に医師から「遺言能力があることを確認した診断書」を取得しておくことで、後の相続トラブルを回避できる可能性が高くなります。
なぜ診断書が重要なのか?
遺言書が争点となるのは、ほとんどが相続開始後です。相続人同士で意見が対立し、「親は認知症だったからこの遺言は無効だ!」と主張されることがあります。
その時、遺言作成時の判断能力を証拠として示せるかどうかが、大きなポイントになります。
成年被後見人でも遺言書は作れるのか?
「認知症が進行してしまい、成年後見制度を利用している場合」はどうでしょうか?
結論:成年被後見人でも条件を満たせば作成可能
成年被後見人とは、判断能力がほとんどないと認められた人のことです。このような方でも、実は以下の3つの条件を満たせば、遺言書の作成は可能とされています。
成年被後見人が遺言書を作成する3つの条件
- 一時的に判断能力(事理弁識能力)が回復していること
- 医師2名以上の立ち会いがあること
- 医師による遺言書への付記(遺言能力がある旨の記載)があること
これらの条件が整えば、有効な遺言書が作成可能です。
公正証書遺言や秘密証書遺言の活用
判断能力がグレーな場合や、後のトラブル回避のためには、公正証書遺言の作成がおすすめです。
公証役場で公証人が内容を確認し、記録に残るため、後で無効とされるリスクが低くなります。
遺言書作成時に絶対に避けたいリスク
最後に、注意していただきたいのが、「遺言能力のない状態で作成された遺言書は無効」ということです。
これはつまり、本人は意図して遺言を残していたつもりでも、後になって裁判で無効とされる可能性があるということです。
実際に、相続争いの中で「遺言当時の判断能力」が争点になるケースは少なくありません。
まとめ:認知症でも諦めないで!正しい手続きを踏めば遺言書は作成可能
- 認知症でも判断能力があれば遺言書は作れる
- 判断が難しい場合は医師の診断書が重要
- 成年被後見人でも3つの条件を満たせば作成可能
- 後のトラブルを避けるには公正証書遺言の活用がおすすめ
認知症だからといって、**すぐに遺言書作成を諦める必要はありません。**大切なのは、正しいステップを踏んで、法的に有効な形で遺言を残すことです。
「自分の場合はどうしたらいいのかわからない…」
そんな方は、ぜひ一度、専門家である司法書士にご相談ください。